2、プロローグ~実はこっちが現実でした

 

 

「──というのが、キミの前世だ。いやあ酷いもんだねえ」


 そう言って、気の毒そうな目を向けてくるのは、幼馴染であり、この世界最強の魔導士、ランディだ。


 なんか新しい魔法を覚えたとかで。それが記憶退行とかいう変わったやつらしく、どういうのかよく分からなかった。


 良く分からないけど面白そう!どんなのか試してみたい!とお願いしたらかけてくれた。


 その結果、私の魂は前世の記憶を取り戻すこととなったのだ。


「にしても、嫌な魔法だなあ。いい記憶ならともかく、忘れていたい記憶なんて……これ、封印した方がいいかも……でもなあ、何かに使えないかな……」


 ブツブツと呟くランディは、既に私のことなど忘れて魔法の研究に没頭だ。


 だが、私はそんな簡単に切り替えられなかった。


 私の前世──知らない世界の、けれど知ってる世界という、奇妙な感覚に包まれながら。けれどあれは紛れもない事実だ、確かに私の前世で起きた事だと理解していた。


 頭がじゃない。魂が、そう告げる。


 そうして決意する。

 メラメラと燃えたぎる闘志を胸に。


 私は決意した。


「ねえランディ」

「ん~?」


 声をかければ、一応の返事。聞いてるのか聞いてないのか。

 別にどっちでも良かった。


 ただ、私は宣言したかったのだ。


「私、復讐するわ!」


 復讐の宣言を!!


 それを聞いて、さすがにランディも自分の世界から戻って来た。

 驚いた顔で私を見る。


「復讐すると言っても、あれは当然過去の話だよ?どうやら異世界の話みたいだけど、異世界だろうが異次元だろうが、時の流れは等しいんだから」


 大魔導士のランディがそう言うのだ、そうなのだろう。


 というか、あれが本当に過去の話なら、少なくとも私──フィアラット=ゼルス=ノルディアス侯爵令嬢の年齢──17歳から考えるに、17年、いや18年以上前の話になると思われる。


 それは分かってるが、そこを何とかするのが大魔導士なんじゃないのか。


「過去の記憶が見れるくらいなんだから、過去に干渉することも出来るでしょ?」

「え、何それ恐い」


 歴史を変える。もしそんな事できるなら大変な話だ。

 下手をすれば今が変わりかねない。


 が、あれはこっちの世界の話じゃないし。あくまで異世界の話だしいいんじゃない?と、軽く考えることにした。

 そもそもそんな難しい事、考える必要なんて無いと思う!


「下衆に制裁下すためなら、歴史を変えてもいいと思います!」


 ビシッと優秀な生徒っぽく、真っ直ぐ手を伸ばして挙手して言ってみました!


 ちなみにだが、私はこれでも真っ当な考えの持ち主ですよ。ただ、奴らが下衆すぎただけです!


「どうですか、先生!」

「先生って……う~ん、まあいいかあ」


 そして、私よりもランディの方がマッドなんですよ、実は!


 逡巡するフリをしながら、あっさり承諾してくれるあたり!


 もしここに第三者がいれば全力で反対したかもしれないけど。

 幸いにも居ないのです。


「よっしゃあ!それじゃあランディ様、お願いしますね~」

「うわ、気持ち悪い!『様』とか付けないでよ!」

「だって大魔導士様の力無いと無理だもん」

「まったく……大魔導士で公爵家跡取りの俺を顎でこき使えるのは、フィアラくらいだよ」


 困ったように苦笑しながら。

 でも優しく頭を撫でてくれるランディが私は大好きだ!


「ふふ、ランディ大好きよ」

「へ、え、うえ!?フィアラ、なんか性格変わった?」

「う~ん、前世を知ったからかな?え、こういうの嫌い?」

「いや別に嫌いでは……むしろ可愛いというか何と言うか……」


 なんか小声でボソボソ言ってて聞こえん。

 まあいいか、協力してくれるならなんでも!


 こうして協力者を得た私は、復讐するべく何度も過去へと戻ることとなった。


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