バンドはやっぱ、やめられねえよ。

@shinkakuno1013

第1話

 友情は、互いの心がこいつとならずっと付き合いたいと思った時に初めて成立する愛の一つだ。しかし、朱に交われば赤くなる。だからこそ、友達、仲間は適当に選ぶなってこと。胸襟を開く気になっても実際、そりが合わない奴なんて腐るほどいるし。

 咽元過ぎれば、暑さを忘れる。だが今日は、メチャクチャ暑い。それでも練習してる俺らって一体?でもまあ、これが今日ラス。“そこのリフからもう一回やろうぜ”リーダーでボーカルのサトシが言った。ジャガジャガジャジャーで一応終わり。今日の出来は良くなかったが、最後、何とか決まったので今日の練習はこれにて終了だ。夜の漆黒の中で、生み出す音楽もいいんだなこれが。失敗したら反省。反省したらすぐにスイッチを切り替えるのが練習では大事。さあっとやってとっとと帰る。用は集中力の問題。みんな足早でそれぞれの家に帰って行く。大体、練習日はこんなものだ。芸術は長く、人生は短しだけれども、俺たちプロを目指す“バンド”にとっては、これが日常。全国、いや、世界中に星の数程いるバカ野郎共も。おっと失礼、宇宙一のロマンチストとでも言っておこうか。とにもかくにも素敵な奴らには違いない。バンドやってる奴は少なからずそういう奴らだと俺は信じていたい。誰がなんと言おうと俺らはそういう類の人間だ。

 家に着く。共益費込みで家賃四万7千円の安アパート。都内で1Rのユニットバス付きの最低価格。ギリギリでカッツカツの男が必死で見つけた城。誰も待っていない部屋だけど、とりあえず“ただいま”と一人寂しくも呟いた。結構気に入ってるトートバックだが、軽くその辺の適当な所に投げて置く。床掃除、最近てんでしてないのに。TVを点ける“カチャ”電源が入り、画面に光が灯る。すると流れてきたのは、最近巷を賑わしてるヴィジュアル系バンドの演奏だった。その瞬間目に飛び込んできたのは俺と同い年ぐらいの男。顔で言えば、男の俺が言うのもしゃくだけどイケメンの部類に入る。要は女受けする顔。ダークブラウンに染めた髪をワックスでツンツンに立たせ今どきのロックスターを地で行くタイプだと画面から伝わって来る。なんか今、ちょっとムカついたけど、その後しばらく見入ってしまった。で今日は疲れたから、この後シャワーも浴びずにすぐに寝た。シャワーは、朝浴びればいい。いつもそうしてるし。

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