第136話ラナちゃんの苦悩

次の日、私達は朝早くから準備をし始めた。

 屋台にコンロと油の入った鍋をセットして、予備の油も用意してのせて置く。

 下の段には衣の付いたカツを乗せ、後はパンのスペースを空けて置く、他にもまな板と包丁、カツを油から上げるためのトング、ラナちゃんが菜箸をうまく使えなかったのでこれにした。

 パンに挟むための葉野菜も樽を横に設置して持っていく。


「マリアおねえちゃん、野菜の芯はどうします?」


ラナちゃんの質問を聞いて、私は少し考えこんでから利用方法を思いついた。


「野菜くずは空きの鍋を用意して置くからそこにお願い、それで料理を一品作るから」


私がラナちゃんに言うと、ラナちゃんは驚いた様に目を見開き。


「野菜くずでも料理になるんですか?」


ラナちゃんは驚きながら言うので私は微笑みながら。


「そうよ前に食べたポトフって憶えてるかしら、それの野菜や肉が入ってないスープだけを作るなら、野菜くずでも出来るのよ。

 しかも野菜の皮とか芯は栄養が多い所だから、スープに溶け出すと健康にも良いのよ」


私は野菜くずを使ったコンソメスープの作りかたを、ラナちゃんに説明する。

 説明を聞いていたラナちゃんが悲しそうな顔をしながら。


「もっと早く知っていれば他の子達にご飯を食べさせて上げれたのに・・・」


ラナちゃんが追い込んでしまったみたい。

 でも、誰でも一人じゃ出来ないことも有るから、仕方ないと思う、これから出来るようになればいいんじゃないかしら。

 私は落ち込むラナちゃんの頭を撫でながら。


「今はそんなこと無いでしょ、それにあの子達も気にしてないと思うな、ラナちゃんが頑張ってたことはしてるだろうし」


私は撫でながら話しかける、俯いていたラナちゃんは、私を見上げ笑顔を向けてくれた。

 

私達が話している間に、アトムくん達が用意を済ましてくれて、いつの間にか私達のやり取りを見つめていた。


「そうだ!ラナが頑張ってたことなんて、俺達は最初っから知ってる。

 院長先生が死んで一番悲しい時に、お前が涙を我慢して、俺達のために頭を下げて食べ物を貰ってきていたこと、俺達は知ってる。

 そんなラナのことを攻める奴なんて、俺達の中に居る筈無いじゃ無いか」


アトムくんの言葉に他の子達が一斉に頷く。

 アトムくんの言葉を聞き、ラナちゃんの瞳から涙が伝い落ちた。

 ラナちゃんは俯き両手で顔を隠してしまう。

 俯いたラナちゃんにアトムくんが近づき頭を撫で、カーラちゃんが後ろから抱き着き、エイミーちゃんがラナちゃんの手を取り、慰め始めた。

 

落ち着くまでそうしていた私達は、ラナちゃんが落ち着いたことで移動し始めた。

 アトムくんが屋台を引き、アントニーくんとチェスターくんが屋台を押していた。

 

パン屋に付き、私達は入り口から入りながら挨拶をすると、中から奥さんの声が聞こえてきた。


「おはようございます」


「おはよう、来たね、出来てるから運んどくれ」


店の奥から声がして、奥くからリナちゃんが出てきた。


「おねえちゃんたちこっちだよ!」


リナちゃんはエイミーちゃんの手を取ると奥へ案内してくれる。

 リナちゃんに導かれて奥に入ると、窯の前に男性が立っていて、テーブルでは奥さんがパンをこねていた。

 

「あんたら用のパンはそこに置いてあるから持ってきな、料金はリナに渡しといてくれ」


奥さんはパンをこねながらそう言い、横に有る箱を指さした。

 奥さんが指さした箱を見ると、パンがギッシリ入っていた。

 

「では貰っていきますね」


私は奥さんに声を掛け、私達は手分けしてパンの入った箱を屋台に積み込んだ。

 パンの積み込みを終えた私は、リナちゃんに代金を渡した。

 それと一緒にリナちゃんの手に飴玉を渡してあげた。

 

「マリアおねえちゃん、これな~に?」


手の中の飴玉を見つめ、不思議そうに首を傾げているので、皆にも渡して食べ方を教えて上げた。

 皆は慣れたもので、直ぐ飴の包を開いて口に入れ始めた。

 リナちゃんはエイミーちゃんの行動を見て、自分も飴玉の包を取ると口に入れた。


「おいし~、これおいしいよ、マリアおねえちゃんありがとう!」


リナちゃんは飴玉で片頬を膨らませながら、私にお礼を言ってきた。

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