第116話帰還

帰路について3日目の昼、私達はやっとトラットの市壁は見える場所まで戻って来た。

 森を出て街道に出た私達は、全員身体を伸ばしたり、肩や首を回して緊張していた身体を解した。


「ふう、やっと街道に出ることができた」


アベルはそんなことを言いながら首を回した。

 帰ってくるまでに大分魔物と遭遇してしまった。

 ウルフの様な私達から言うとそんなに強くない魔物から、ソルジャーマンティスの様な、金等級まではいかないけど、銀等級の魔物とも遭遇した。

 ソルジャーマンティスはそんなに大きくないらしい、それでも全長3メートル体長2メートル位は有るし、鎌での攻撃はなかなか早かった。

 でも鎌に気を付けていれば、そんなに怖い魔物じゃなかったわ。


色々な魔物と遭遇して一番苦戦したのは、レッドファングアントの群れに遭遇してしまった時が、一番苦労した。

 どうも巣穴の近くを通っちゃったみたい、(探査)も地中にいる魔物迄気配が感じられなくて、巣穴の近くを通った拍子に、レッドファングアントと遭遇して、

そのまま1匹倒したんだけど、そのせいで巣穴からワラワラとレッドファングアントが這い出してきて、結局私達は逃げ出すことになったのよ。

 最後に後ろを確認した時、100匹はいたように見えたのよね、さすがに100匹とか私達だけで戦いたくないわ。

 それにレッドファングアントは、1匹の大きさが全長2メートルは有って、兎に角顔が怖かった。

 後ろ確認した時軽く悲鳴上げちゃった位怖かった。

 顎をガチガチ鳴らしながら、100匹もの群れで追いかけられたのは、軽いトラウマ物よね。

 

蟻に追いかけられながら、何とか逃げ切って、トラットの町が見える所まで戻って来れたんですもの、疲れがどっと出てもしかたないわ。


「さすがにあの大群は吃驚したわね」


マーナが疲れたように呟くと、皆頷いて肯定していた。

 一息ついた私達はトラットの町に向かって歩いて行く。

 

6日ぶりに帰って来たトラットの町は、何だか懐かしく感じた。

 相変わらず人道りの多い町中を歩き、先ずは冒険者ギルドに向かっ歩いて行く。

 久しぶりの冒険者ギルドは、ここもいつも通りだった。

 中に入ると私達を、久しぶりに見つけた冒険者達が騒めいていた。

 

「あれ、ここんとこ見なかった聖女様じゃねーか?」


「おお、久しぶりに見るな、他の町でも行ってたんか?」


「これでまた怪我しても治療してもらえる」


「嬢ちゃんが居なかったから、エイミーちゃんも来なかったもんな~」


私達を見つめて冒険者達が口々に話し合い、その中を微笑みながら私達は、レインさんの居るカウンターまで進んできた。

 レインさんは私達が帰って来たことに気付いて、笑顔で迎えてくれた。


「お帰りなさい、調査報告ですね、直ぐギルドマスターをお呼びしますので、3階の会議室へ向かいましょう」


レインさんはそう言ってカウンターから出ると、私達を先導しながら階段へ向かった。

 3階に上がり、会議室に入るとレインさんが。


「それではこちらでお待ちください、直ぐにギルドマスターを呼んで参りますので」


レインさんはそう言うと扉を閉めて行ってしまった。

 私達はそれぞれテーブルの前に置かれた椅子に腰を掛け、休んでいると直ぐにギルバートさんが扉を開いて入って来た。


「おう、帰って来たんだな!期間時間より大分超えていたから、心配したんだぞ!もう少し遅れていれば新たに調査隊を送るところだった」


ギルバートさんは椅子に腰を下ろし、直ぐに話し始めた。

 

「ご心配おかけしました、実はこの子の案内でシュトゥルムバイターが通ったと思われる場所へ行っていましたので、遅くなってしまいました」


私は肩に乗るキャトルーを、テーブルに下ろしながら説明すると、ギルバートさんは目に鋭い光をともした。


「それで、状況はどうだったのかね」


私はギルバートさんにキャトルーの故郷に行ったこと、そこで見た木々が吹き飛ばされ、大地が抉られた光景を報告した。

 私の報告をギルバートさんは目を閉じて静かに聞き、私が話し終わると目を開き。


「なるほど、ご苦労だった。

 報酬は下のカウンターで受け取ってくれ、それとその内銀等級への昇格もすることになるだろう、ご苦労だった」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る