第114話決別

私達は1日だけその場に残り、出来るだけ残骸を退かし探し回ったけど、手がかりらしきものは一向に見つけることができなかった。

 その夜。焚火を囲み私達は話し合っていた。

 

「1日探し回ったけどキャトルーの親の遺体は見つからなかったな・・・」


アベルが今日1日の成果を報告する。

それを聞きながら、マーナも話し始めた。


「でも見つからなかったって事は、キャトルーみたいに生きてる可能性も・・・」


マーナは話しながら、自分がかなり希望が薄い可能性を言っていることに、気付いてしまい言葉が出なくなってしまった。

 マーナの気持ちも分かる、あれだけ探して見つけることができなかったので、もしかしたらと思ったんでしょうね。

 皆の表情は優れない、皆キャトルーの両親を見つけてあげたかったのは、言わなくても分かることだった。

 でも見つかるまでずっと居るわけにもいかないので、アベルは代表してキャトルーに声を掛けた。


「キャトルー、ごめんな、見つかるまでずっとここに居るわけにはいかないんだ。

 明日には戻り始めないといけない、調査依頼の期間も大分超えてるから、このままじゃ調査隊が出されかねないんだ。ごめんな・・・」


アベルが事情を説明して沈痛な顔で誤ると、キャトルーはアベルの顔を見つめ、あえて明るい口調で話しかけた。


「気にしないで欲しいにゃ、ここに来る前からこうなるんじゃないかって思ってたにゃ。

 実際来て家が無くなってた事は悲しかったし、親もいなかったのは悲しいにゃ。

 でもずっと悲しんでも居られないにゃ、トラットの町に戻るにゃ、エイミーがボクが居なくて悲しんでるはずにゃ」


キャトルーの言葉を聞いて私は微笑んだ。

 なんだかんだ言って、キャトルーもエイミーちゃんのこと気に入っているのね。

 私はキャトルーの言葉に嬉しくなった、自分が悲しい時に他の子の事を考えれるのはいい事よね。


「キャトルーはいいやつだな」


アベルがキャトルーに話しかけ、アトムくんはキャトルーの頭を撫でながら。


「エイミーのこと、心配してくれてありがとう」


アトムくんがお礼を言うと、キャトルーは鼻の上を掻きながら、嬉しそうな顔をして。


「当然にゃ、ボクは紳士にゃ」


キャトルーは胸を張り、そのフサフサな胸毛を見せつけながら答えた。

 キャトルーの様子を見た私達は少し安心して、お互いに笑い合っていた。


「じゃあ、明日には帰還するぞ」


アベルが改めて言うと皆頷いて返事をした。

 

夜、夕ご飯を食べた私達は見張りに付いた。

 今日は私とマーナが先に見張りに付き、キャトルーも一緒に見張りに付くことになった。

 私とマーナがお茶をしながら見張りをしていると、キャトルーが焚火から離れ家の扉があった場所へ歩き出した。

 私とマーナは顔を見合わせて、焚火から火のついた枝を持ち、キャトルーを追いかけた。

 

キャトルーは扉の前まで来ると、石を拾い集めて積み始めた。

 その様子を後ろから見つめていた私とマーナにキャトルーはポツリポツリと話し始めた。


「こうしておけば、きっと見つけてくれるにゃ、そうすれば生きてることは伝えられるにゃ。

 生きてることが分かれば、離れ離れでもきっと寂しさに耐えられるにゃ・・・」


それを聞いたマーナは一緒に石を集め始め、私は作って置いたキャトルーに似せたぬいぐるみをストレージから取り出した。

 そのぬいぐるみをキャトルーに見せながら。


「このぬいぐるみを見ればきっと、キャトルーがここに来たって分かってくれるわ」


私はそう言うと、キャトルーが積んでいた石のそばにぬいぐるみを置いた。

 

「あ、りがと、にゃ・・・」


キャトルーはその人形を見て、俯いてから掠れた声でお礼を言ってきた。

 

その後私達は石を積んで、ぬいぐるみが飛ばないように石を重しにしてみた。

 それから私は夜食としてキャトルーに鮭のホイル焼きを上げることにした。


鮭のホイル焼き

プレイヤーマリアが作った料理

効果 INTとSTRを120秒間だけ100上げるAGIを500上げる。


こっちじゃ魚が手に入らないから、メビロ時代に作った料理を出してみた。

 魚料理を見たキャトルーは飛び上がって喜んだ。


「魚にゃ!久しぶりに食べるにゃ!」


キャトルーはすごい勢いで食べ始め、嬉しそうにしていたから私も嬉しくなって微笑んでいた。

 キャトルーの様子を見て喜んでいた私の肩を、後ろからガシリと掴まれた。

 そちらを見るとマーナがよだれを垂らしそうな顔で私を見つめて聞いてきた。


「私の分は?」


マーナの様子みて、少し引き気味にストレージから鮭のホイル焼きを出してあげた。

 鮭のホイル焼きを貰ったマーナは早速食べ始め、美味しそうに食べていたので、私も一緒になって食べることにした。

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