第113話破壊の傷跡

簡単な食事を済ました私達は、扉のあった近くを探し始めた。

 南西から北東へ向かって、半円に削り取られた100メートルほどの溝と、その端に飛ばされた木々が、その凄まじい破壊の傷跡をより凄惨に彩っていた。

 端に寄せられた残骸を、手がかりが無いか調べているとアトムくんが声を上げた。

 

「みんなー、ちょっと来てください!」


アトムくんの声を聞き、私達はそれぞれ何か無いか探して歩いて居たけど、一旦集まった。

 アトムくんが声を上げた場所に行くと、呼ばれた理由が分かった。

 そこには瓦礫に押しつぶされた熊の様な魔物が、横たわっていた。

 その熊の魔物は息をしていなく、死んでいることが直ぐに分かる。

 その魔物は辛うじて、頭と左腕が瓦礫から出ていたが、それ以外は瓦礫に埋もれていた。


「個の体毛・・・マーダーベアか?こんな魔物も倒れてるってことはかなりの破壊力だたんだろうな」


熊の少し赤茶色の体毛を確認したアベルが、熊から目を離し抉られた大地の傷跡を眺めながら、何か考えているように呟いた。

 私はマーダーベアと言う魔物を知らなかったので、アベルに質問してみた。


「マーダーベアはどのぐらい強いんですか?」


私が質問すると、アベルは大地の傷跡を見ていた目を離し、こちらを見て話し始めた。


「マーダーベアは等級で言ったらワーラントと同じ金だ、スピードはワーラントに負けるが、パワーはマーダーベアの方が上だ。

 だから一撃貰ったら人なんて吹っ飛ばされちまう」


アベルの説明を聞いてマーナも話し始めた。


「でもこのクラスが死んでるのを見ると、ホントにシュトゥルムバイターってバケモンなんだね」


マーナの言葉に私達は頷き、アベルはマーダーベアの死体を見ながら私に聞いてきた。


「マリアこの状態でもこのマーダーベアの死体ってストレージに入れられるか?」


アベルの質問に私は頷き、マーダーベアの頭に触るとストレージにしまった。

 マーダーベアの死体が目の前から消えたのを確認すると、私に話掛けて来た。


「悪いな、調査報告する時に証拠として提出したくて」


アベルの説明を聞き「いいですよ」と笑って答えた。


それから辺りを探し回った私達は、他にも多くの魔物の死体を見つけ、それらもストレージに回収していった。

 でも積みあがった木々は退かすことができなくて、残骸の下は調べることができなかった。

 そうして辺りを調べている間に、キャトルーが目を覚ました。

 目を覚ましたキャトルーは、項垂れて落ち込んでいることが一目で分かるほどだった。

 私達はキャトルーにどう声を掛けて良いか悩んでしまった。

 

私は肩を落とすキャトルーを抱きしめ傍に寄りそう。

 そうしている間にアベル達は辺りを探索し続けた。


探索している間に日も傾いてきて、辺りも暗くなってきていた。

 私達は一度集まり、夕食にすることにした。

 

私は揚げるだけで作れる豚カツを作り、カツサンドにして夕食にした。

 焚火を焚き、その周りに集まった。

 

「それにしてもこれだけ探索したのに、魔物が全然いないな」


アベルが辺りを見回しながら話した。

 それに同調するようにマーナも頷いて話し始めた。


「そうね、全然魔物の気配が無いわ、動物もいないみたい」


2人がそう言うので私も(探査)で確認してみたけど、全然気配がなかった。

 この破壊で森の魔物が逃げて、トラットの町の近くまで行ったのね。

 原因も分かったから、その元凶もすでにここに居なそうだから大丈夫そうね。


「こんな状態なら逃げたくもなるよな」


アベルがそんなことを呟いて、焚火の火を枝で移動させていた。

 

「でも元凶が居ないみたいだから、その内魔物も戻って来るのかもしれないわね」


私は先ほど考えていた事を言葉にして言うと、アベル達は頷いて肯定してくれた。

 

「それにしても伝説の神獣の名は伊達じゃねーな」


アベルがそんなことを呟くと、アトムくんも話し始めた。


「レイクオーバーは転んだ痕が湖になっているって聞きますから、生きた天災ですよね」


アトムくんが言うと、アベルとマーナは頷き、私はその神獣のことが解らなくてぽかんとしてしまった。


相談が終わると、私達は見張りを立ててテントで休むことにした。

 キャトルーは私達と一緒に先に休むことになって、私と一緒に眠った。

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