第106話北東の森の調査 1

次の日、私達は冒険者ギルドで合流した。

 ギルド内は相変わらずの賑わいで、掲示板の前には人集りが既にできていて、依頼が張り出されるのを今か今かと待ちわびていた。

 そんな中、私達はカウンターに近づいて行った。

 もちろんレインさんの居るカウンターへ行くと、レインさんが丁寧にお辞儀をしてくれた。


「いらっしゃいませ、今日は指名依頼の出発手続きでしょうか?」


レインさんは依頼内容をあらかじめ聞いているようで、私達に尋ねてきた。

 私達が頷くと、レインさんは軽く頷き。


「それでは、手続き致しますね、冒険者証を提出お願いします」


レインさんの案内を聞いて、代表してアベルが冒険者証を提出した。

 レインさんはアベルから冒険者証を受け取ると、用紙に記入を始め少し待つと、顔を上げて話し始めた。


「手続きは終わりましたので、依頼に向かってもらって構いません、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


私達はレインさんに見送られ、冒険者ギルドを出た。

 外も賑わっていて、混雑している。

 私達は北門に向かい、門番さんに通行書の木札を見せて北門を出た。

 のどかな道をいつものように森の入り口まで歩いて行く。

 この頃は、商隊が魔物に襲われたと言う話は聞いていなかったから、大分落ち着いたのかもしれないわね。


私達は森に向かっている途中、暇になったので、アベルが話しかけてきた。


「今日はどうしたんだ?いつもより少し遅かったようだけど?」


アベルの質問に、私は少し顔を赤くしながら俯き、それを見ながら遠慮がちにアトムくんが質問に答えた。


「それがですね、いざ出かけるってなった時、マリアさんが心配だからって、色々アイテムを出して皆に注意をし始めて、なかなか出かけられなかったんです・・・」


アトムくんの説明を聞いて、アベルとマーナが堪え切れず笑い出した。


「なんだ、マリアは本当に子供好きだな、森の木陰亭のアイナちゃんにも、色々上げてたんだろ?本当にマリアらしいな」


アベルが感想を言うとマーナも「本当よね」と相槌を打っていた。

 

だって仕方ないじゃない!いざ出掛けるってなると不安になってきて、病気にならないように手洗いうがいを忘れない様にとか、泥棒に入られないように鍵はしっかり掛けるようにとか、知らない人についてかない様にとか、色々心配になってきちゃったんですもの。

 孤児院がある当たりって治安悪いから、心配になっちゃうのよ。

 私が思い出して心配になっていると、アトムくんが笑顔で話しかけてきた。


「マリアさんがこんなに心配してくれるなんて、俺はすごくうれしいです!」


アトムくんが笑顔で嬉しそうに言ってくれるので、私もうれしくなった。

 

皆とそんな話をしていると、直ぐに森の入り口にたどり着いた。

森の入り口でアベルが皆を見回して話し始める。


「今回は森の調査だから、魔物の気配が有ったら確認のために近づくぞ、魔物の種類を確認してもし敵に見つからない様なら離れよう。

 見つかってしまったら倒すしかないけど、毎回戦っていたら俺たちの体力が持たない、出来るだけ戦わないようにしよう」


アベルの提案に皆頷いて、それを確認したアベルは森に入っていった。

 私もアベルの後ろを付いて行きながら(探査)を使い森の様子を窺い始めた。

 森の中はかなりの数の、大小様々な気配を感じることができた。

 立ち入り禁止になっていたためか、かなり魔物の気配がある。

 私はいつでも戦闘になってもいい様に、盾とメイスを装備すると、アベルがそれを見て話しかけてきた。


「マリア、直ぐにでも戦闘になりそうなのか?」


アベルの質問に私は「気配はいっぱいあるけど、直ぐに戦闘になるかは解らないわ」と言うと「そうか・・・」とだけ答えて前方に向き直った。


そのまま私達は息をひそめ、気配がある場所を確認していった。

 (探査)の反応をたどりながら気配を確認していく、その中で固まっている気配は大体オークかウルフだった。

 この2種類は元からこの森に居たのでいても問題ない、他はホーンラビット位だった。

 今の所は問題無く進んでいた。

 私達はそのまま進み続けて、やっとキャトルーを拾った川岸にたどり着いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る