第81話スキルブックの効果

カーラちゃんがスキルブックの表紙を開くと、スキルブックは光の玉に変わり、カーラちゃんの手を離れてカーラちゃんの胸に吸い込まれていった。

 スキルブックがカーラちゃんの胸に吸い込まれると同時に、カーラちゃんは空中を見つめて呆けた表情になった。

 

「カーラちゃん大丈夫ですか?」


私は心配になりカーラちゃんの肩を揺らしながら聞くと、カーラちゃんは相変わらず空中を見ているけど、目だけは何かを追うように左右に忙しなく彷徨い、

時々何かを呟いていた。

 私は返事が帰って来ないことに不安を覚えていたけど、他にどうすることもできなくて暫くカーラちゃんの動きを見ていた。

 そんな中アントニーくんが興味深げに聞いてきた。


「ねーちゃん、スキルってどんなスキルでも持ってるのか?」


アントニーくんの質問に、私はストレージを見て、悩みながら答えた。


「う~ん食いしばりの在庫が無いわね、後次元斬のスキルブックは持ってないわ」


次元斬とか運営主催のPVP大会の景品だから、そもそも持ってないのよね、他にもそもそも一個しか手に入らなかった物とか、使っちゃって無いから全部じゃないのよね。

 私はストレージを調べながら、そんなことを考えてからアント二ーくんに答えた。


「どんなスキルが欲しいの?あまりレアなスキルは持って無いんだけど?」


私がそう言うとアントニーくんはニヤリと笑って私を指さして宣言してきた。


「オレの欲しいスキルは剣術だ!」


アントニーくんの言う事に私は納得してしまった。

 そうよね、だってスキルも無いのに訓練の木剣振っても意味ないわよね。

 才能があれば確かにスキルは発言するかも解らないけど、木剣振り続けるなんて効率的じゃないわよね。

 それにこの世界他人のステータス見れないし、私以外自分のステータスも見れないんですもの、そりゃ有るか無いか分からない才能に頼るより、今スキルが手に入るチャンスが有るんですもの堅実なスキルが欲しいわよね。

 私は納得して、アントニーくんに剣術のスキルブックを渡すためストレージからスキルブックを出した。


「アントニーくん、スキルが有るからって油断してはいけませんよ」


私がスキルブックを渡しながらたしなめると、アントニーくんはニカリと笑って大きく頷いた。


「分かってるよ、スキルがあっても勝てない時が有るんだろ?」


アントニーくんが、当たり前のようにそう言ってきたので、私は不思議に思った。

 何でここまで正確に、スキルの在り方を知ってるんだろう?


私が不思議そうにしているのを見て、チェスターくんが説明してくれた。


「マリアさんは聞いたことありませんか?僕たちには結構有名な御伽話なんですけど?」


チェスターくんの質問に、私は首を横に振って知らないことを意思表示すると、チェスターくんがその御伽話を話して聞かせてくれた。


「ある所に剣術スキルが高い青年がいました。

 青年は剣を持てば負け知らずで、魔物にも簡単に勝ててしまうぐらい強かったのです。

 ですが青年はその才能に溺れ、全然剣術の稽古をしなくなりました。

 それでも青年は負け知らずで、剣術大会では何時も一位だったそうです。

 でもある日の大会で、決勝戦に当たった、対戦相手の同い年位の若者に、青年は初めて敗北したんだそうです。

 初めての敗北に悔しがった青年は、若者に聞いたんだとか「お前はどんな凄いスキルを持ってるんだ!」と、青年に聞かれた若者は、苦虫を噛みつぶしたような顔になって「僕には剣術のスキルが無いけど、一所懸命練習して強くなったんだ」

青年は若者の話を聞いても信じることができなくて、結局すごいスキルを持ってるから、自分に勝てたんだと思うようになりました。

 それからも青年は若者に勝てなくて、大会にも出なくなってしまったんだとか」


私はチェスターくんの御伽話を聞いて納得した。

 教訓を後世に残すために、御伽噺って形で残したのね、確かにこうすれば重要な情報は、残されやすいかもしれないわね。

 私はチェスターくんの御伽噺に納得してしまった。


私がチェスターくんから御伽噺を聞き終わった時、カーラちゃんが「分かりました」と叫び声を上げた。

 そちらを向くと、カーラちゃんが嬉しそうに、両手をあげて喜んでした。

 皆がカーラちゃんの様子を見ていると、カーラちゃんは興奮しながら。


「凄いわ、スキルブックって、魔法の使い方がわかったのはもちろんだけど、字も読めるようになったの」


カーラちゃんの言葉に、皆驚いて理由を聞いてみた。

 するとカーラちゃんは、説明をし始めてくれた。

 

「魔法覚えるのに、スキルブックの内容が、字が読めないのに読めたんです!」


ん?もしかして字が読めるようになったの?え?教えられずに覚えちゃったの?

 私が混乱していると、皆は一斉に私に見つめてきた。

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