第56話ホーンラビットは美味しい
男性と入れ違いにアベルは食堂に入ってきたので、マーナが手を振りアベルを呼び寄せ、アベルはテーブルに着くと空いている席に付いた。
アベルが席に付くとナタリーさんが、私達のテーブルに夕ご飯を持って来てくれた。
私たちはトレーを受け取りながらナタリーさんに代金を渡し、全員分運ばれてきた所でご飯にした。
「今日のメニューは何かしら?」
私が疑問に思ったのは一見見ただけじゃあ分からなかったのよね。
肉の入ったスープとサラダ後コロア水だった。
私の呟きが聞こえたのかアイナちゃんが近づいてきて。
「きょうのスープはホーンラビットのスープだよ」
アイナちゃんが態々来て教えてくれたので、私は「ありがとう」とお礼を言いながらアイナちゃんの頭を優しく撫でた。
アイナちゃんは目を細め、気持ち良さそうした後、仕事に戻っていった。
彼女が仕事に戻るのを見送って、私達は食事をし始めた。
ホーンラビットの肉は鶏肉に近い味ね、料理の仕方で美味しくなるかも、鶏肉か~唐揚げにしたら美味しいかな?
私がホーンラビットの調理法を考えていると、アベルが話しかけてきた。
「明日クエスト受けるんだろ?あらかじめ何受けるか決めとこう」
アベルの申し出に、私は何が良いか考えていると、マーナが意見を出した。
「ウルフやゴブリンは簡単だけど、せっかく装備も新しくなったんだから、オーク狩に行くってのはどう?」
「そうだな、今の俺達なら、オークもいけるかもしれないな」
二人はそう言いながら、明日のクエストのことを話している横で、私はどうなるか考えていた。
二人のウルフとの闘いを見て、その手際の良さから大丈夫だろうと思った。
「二人の実力なら大丈夫だと思いますよ」
私は笑顔で言うと自信が付いたのか、アベルは立ち上がり。
「明日はオーク討伐クエを受けよう」
握りこぶしを掲げ宣言するアベルに、私とマーナは頷いた。
私は二人の様子に微笑み、成り行きを見守っていた。
食事を済ませた私は、二人と別れ自分の部屋に戻る。
戻る前には厨房でお湯を貰って、部屋に戻ってお風呂の準備、気付いたんだけど、宿のタライを借りるより、自分が持ってるルームアイテムの猫足バスタブを出した。
バスタブを確認してから厨房でもらったお湯を張り、お風呂に入り始めた。
髪を洗い終わった後に身体もしっかり洗って、すっきりした所でお湯が入ったままのバスタブをストレージに入れ、ストレージのゴミ箱にお湯を捨てておく。
この方法が一番簡単に処理できることが分かってからはこうしてる。
私は寝巻き変わりのワンピースを着て布団に入った。
朝になって食堂に降りるとすでにアベル達が食堂に居た。
私も大分早く起きれるようになってきたのに、二人とも早いな~。
二人の居るテーブルに近づきながら挨拶すると、二人も手を上げて挨拶してくれた。
私が二人の居るテーブルに座るとナタリーさんとアイナちゃんが朝ご飯のトレーを持って来てくれた。
朝のメニューは焼いた肉の乗ったサラダとパン、それにコロア水だった。
ささ身の乗ったサラダみたいこの味、昨日のホーンラビットかしら?でも味付けが塩とラナラナって言う唐辛子だけだからな~マヨネーズ欲しいわね。
今日倒すオークから上手くいけばラードが手に入るのよね、ラードがあれば揚げ物作れるかも、オーク肉で豚カツ作れるかも。
豚カツか~ここにきて揚げ物食べてない、食べたいな~唐揚げ、豚カツ、天ぷら、今日の目標が決まったわね。
確かにストレージに某社のサラダ油とかオリーブ油とかあるけど、できるだけ使わずに自給自足できるようにしときたいのよ。
私がいなくても作れるように、そうすればこの世界の料理事情も、少しは良くなってくれると嬉しいな~と、楽観的な考えも有ったりするのよ。
私が考え事をしている間も食事は進み直ぐに食事も終わってしまった。
「それじゃあ、行くか」
アベルが全員が食事を食べ終わったことを確認して、テーブルを立ち上がった。
それにならって、私とマーナも一緒に立ち上がり宿を出る。
朝の混雑で人が大通りに溢れ返っていた。
特に冒険者ギルドに向かう冒険者達が多く見られ、様々な装備をした人々が同じ方向へ進んでいく様子は、壮観だった。
人の波に乗り、冒険者ギルドまで行くと、ギルド内はかなり込み入っていた。
掲示板の前には黒山の人だかりになっていた。
ぎゅうぎゅうで正直あそこに突撃するのは辛いわね。
私が躊躇していると、アベルが掲示板に近づきながら。
「俺が依頼書取って来るから、二人はここで待っていてくれ」
アベルはそう言い残すと掲示板へ突撃していった。
アベルが突撃してすぐに、レインさんが掲示板に近づき、両手を筒の様にして口に当て。
「ただいまから依頼を張り出します、押さずに順番にお取りください」
レインさんの叫びに冒険者達は声を上げ、我先にと掲示板に詰め寄っていた。
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