第4話

 前世とは体格・筋肉量・反射神経なんかがまったく違うのにシスティーゾが放った火球を全て打ち払えた。


 確認のためさらに2、3回木刀を振ってみても、ほぼイメージ通りの動きができる。


 他人の身体、ましてや前の身体とはまったく別物の子供の身体をほぼ思い通りに動かせるのは不思議な気分だな。


 しかもこの秋臣あきおみの身体に慣れていけばイメージとのズレも無くなるという実感もある。


「貴様は何だ?」


 俺が秋臣あきおみの身体と自分の感覚のズレを探っているとシスティーゾが話しかけてきた。


 そういえば今はシスティーゾとの決闘の最中だったな。


 一応、口調は秋臣あきおみらしくしておくか。


鶴見つるみ 秋臣あきおみです。なぜ、そんな事を聞くんですか?」

「貴様は起き上がってから明らかに変わった。目つき、身のこなし、雰囲気の全てがだ。もう一度聞く。貴様は何だ?」

「答えても、たぶんあなたは信じませんよ」

「答える気が無いという事か? ならば直接身体に聞いてやる!!」


 システィーゾの身体から炎が噴き上がり右手を下から上に振り上げると炎が帯状になり俺へと向かって来る。


 速さがさっきの火球とは大違いだが、どんなに速かろうが避ければ良いだけの事。


 俺は正面から迫り来る炎を右斜め前に飛び出しながら避けて、そのままシスティーゾへと走りだす。


 システィーゾは予想していたのか、慌てる事もなく左手の周りに火球をいくつも作って機関銃のように放ってきたが、俺も俺で冷静に火球を避けたり打ち払い、さらにシスティーゾに近づいていく。


「チッ」


 システィーゾの小さな舌打ちが聞こえるくらいまで近づいて木刀を肩口へと振り下ろしたが…………木刀はシスティーゾの身体に当たらずシスティーゾの身体を覆う炎に止められた。


「貴様ごときの能力で俺の炎を破るのは不可能だ!!」


 すぐにシスティーゾが右腕を振って炎の帯を放ってきたため俺は全力で飛び退く。


 木刀の打撃は防がれたが、これで右手の炎の帯でなぎ払い左手の火球で撃ち抜き防御は身体を覆う炎というシスティーゾの戦闘スタイルがわかった。


 対して俺は我流の剣術と秋臣あきおみの能力で生み出した木刀のみ。


 格闘をやれなくも無いがシスティーゾの炎と素手素足でやり合うのは論外だな。


 結論として俺はシスティーゾの炎をかいくぐって炎の防御を打ち破らないと勝てないって事か。


「力の差に絶望しろ!!」


 システィーゾが怒涛の勢いで炎を放ってくる。


 さっきまでとは炎の量も速さも違う。


 身体の近くを炎の帯や火球が通る時に感じる熱も高くなってるから、まだまだ本気を出してなかったって事だな。


◆◆◆◆◆


「うん? この感覚は……」


 しばらくシスティーゾの炎を避けていると俺の中に懐かしい感じが蘇ってきた。


 これは前世で戦場で戦っていた時に感じていたもので、これがある時はどんなに相手が多く乱戦になっていても無傷で切り抜けていたのを思い出す。


 まるで360度全てが見える……いや見るとは違う。


 周りで起こっている事や、これから起こる事を敵自身が教えてくるような感じだな。


 ようやく実感できた。


 俺は自分の身体ではないが戦場に戻ってきた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

◎後書き

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