一度死んだ男は転生し、名門一族を追放された落ちこぼれの少年と共存する 〜俺はこいつが目覚める時まで守り抜くと決意する〜

白黒キリン

第1章 異世界の男は転生する

第1話

◎前書き

 新作です。


 ストックが尽きるまでは、1日3話更新していきます。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



『…………ここはどこだ? 俺はどうなった?』


 俺は死んだはずだ。


 戦場で受けた傷の痛みと熱さ、流血による寒さ、最後に見た抜けるような青空、意識が無くなる時の喪失感を全部覚えている。


 あの時の自分の状態なら死んでいなければおかしい。


 …………わからない事だらけだが、とりあえず自分の状態を確認するか。


 まず身体の状態を確かめるため腕を動かそうとしたら腕の感覚が無かった。


 足も同じで感覚は無い。


 どういう事かと思い周囲の気配を探る要領で自分の状態を探ると今の自分の形がわかった。


 俺は今、ユラユラと揺れる魂だ。


 自分の状態に絶句しつつも、次に周りに意識を向けると周囲はどこまでも続く真っ暗な空間で、俺と同じ魂が無数に光りながら漂っている。


 見える範囲の魂を観察していたら、魂には色の違いがあり黒・濃い灰色・灰色・薄い灰色・白の5段階になっているようだった。


『周りの風景に俺の状態を考えれば、俺が死んでいる事は確かなようだな……』


 今の自分の状況は理解できた。


 理解できたのは良いんだが、疑問が膨れ上がる。


 俺はこの空間でどうすれば良いんだ?


 このまま漂っていれば良いのか?


 何かしらの参考にするため、俺のような奴はいないのかと漂いながら探したが、片っ端から他の魂に声をかけても返答するものはおろか何かしら揺れたり震えるなど反応するものさえいなかった。


 本当に俺はどうすれば良いんだ?


 俺は途方に暮れながら漂い続ける。


◆◆◆◆◆


 どれくらいの時間漂ったのかわからないが、その時たまたま俺の近くにいた白く光る魂がカッとひときわ強く光りそのままフッと消えた。


 初めは突然の事態に唖然としていたけれど、だんだんと次の世界に転生したんだなと感覚的に理解する。


 おそらく白く光る魂は転生待ちの状態で、何かのきっかけがありーーおそらく母親の胎内で赤子の身体ができたとかか?ーーこの空間から消えていなくなったのだろう。


『ようやく明確な目的ができたな』


 自分は黒から白のどこの段階なのか?


 仮に黒だった場合に白になるまでどのくらいの時間がかかるのか?


 また白になったとして転生までにどれくらい待つのか?


 こうした疑問は消えないが、生きていた時の事を思い出したりしながら気長に待つしかないという結論に至った。


◆◆◆◆◆


 あれから体感的にかなりの時間が過ぎたはずだ。


 これまでに100以上の魂の転生する瞬間を見た。


 俺はいつになるやら……。


『うん?』


 声が聞こえた。


 気のせいかとも思ったが、とりあえず小さな変化も見逃さないように集中する。


 その結果……、確かに俺以外の声が聞こえた。


 急いで声のもとに向かうと、そこに居たのは今まで見てきたどの魂よりも小さく色も黒から白、白から黒と不安定に変わる魂だった。


『イタイ……クルシイ……ダレカ……ダレカ……タスケテ』

『大丈夫か?』

『イヤダ……ツライ……イタクシナイデ』

『聞こえているか?』

『ヤメテ……ヤメテ……ヤメテ……ヤメテ……』


 一目見てわかった。


 この魂は壊れかけている。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

◎後書き

最後まで読んでいただきありがとうございます。


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