遊星迎撃隊―Starship Breakers 【リメイク版】

第27話 火竜接触

　すぐさま橋にさしかかり川へと飛び込む。水深は１メートルにも満たない小さな川だが、その川の中をかまわず進む。

　そこへ林の中から黒いパワードスーツが４機飛び出してきた。識別はオレンジ。アンノウンだが４７ミリ弾を連射してやった。そいつらは金属片と血をまき散らしてバラバラになる。

　トリプルDが３機、右手の山間からジャンプして川を越えようとしているところへ対戦車誘導弾をお見舞いする。

　当たらなくていい。牽制できれば。

　右手の山あいに４７ミリ弾をばら撒きながら川の中を走る。正面に誘導弾を回避したトリプルDが着地した。目の前にいたのはＡＡＬ系のトリプルDで、火竜と呼ばれる赤い機体だった。至近距離だが１２０ミリをお見舞いした。そいつはコクピット部分に大穴が空き沈黙した。

　黒いパワードスーツが何機か川を越えて病院側へ走っていく。４７ミリ弾で掃射するも命中したのは２機だけだった。

　火竜が２機こちらへ向かってくる。もう１機の火竜は俺を無視して病院側へ向かう。そして、ハドロンらしき銀色の機体も病院へ向かった。

「こちらクロ０１（まるひと）、火竜１機撃破。パワードスーツ６機撃破。火竜１機とアンノウンのトリプルＤが１機。残りのパワードスーツと共に病院へと向かった。現在、火竜２機と交戦中」

「了解。キャンプ周辺に防御線を張ります。非戦闘員は病院内へ退避させました」

　ニコル中尉が返事をしてきた。

「それでいい。トリプルDはクロ０２（まるふた）に任せろ。パワードスーツに全力で当たれ」

「了解」

「クロ０２（まるふた）、聞いているか？　先に火竜を仕留めろ。赤い方だ。銀色はハドロンの可能性が高い。注意しろ」

「はーい。まかせといて」

　玲香もスタンバっている。

　オレは４７ミリ弾をばら撒きながら火竜をけん制する。遠い方の火竜は赤と銀のツートンカラー。手前にいる方が赤一色だった。遠い方が格上のようだ。俺はツートンの方に対戦車誘導弾を放ち格下に１２０ミリを撃ち込む。格下は１２０ミリ弾をかわしレーザーソードを抜いて斬りかかって来た。オレは弾の無くなった４７ミリと１２０ミリを投棄し、シールドと実剣を装着する。格下の火竜と接触する瞬間、右肩の７６ミリをぶちかます。そいつは頭部を吹き飛ばされて倒れたが、左から回り込んできたツートンの射撃を受け数発被弾してしまう。左肩に装備したランチャーを投棄し回り込んできたツートンに向かおうとするのだが左脚が動かない。膝の可動部に被弾したようだ。

「クロ０１（まるひと）被弾。損害は軽微だが脚部を損傷した」

「クロ０２（まるふた）了解。助けに行けないよ」

「分かってる。こっちで何とかする」

　ツートンの射撃をシールドで防ぎつつチャンスをうかがう。その時、頭を吹き飛ばした格下が起き上がり俺の機体を後ろから羽交い絞めにしてきた。ツートンはレーザーソードを抜きコクピットをめがけて突きを入れてくる。

　絶体絶命。

　いや違う。機動攻撃軍のトリプルDはこんなものじゃない。

　ツートンのレーザーソードをシールドで受けた。シールドは真っ二つになる。そして、オレの機体にしがみついている火竜の右腕を引きちぎった。実剣でツートンのコクピットを突くがかわされた。しかし、振り向いて頭部と右腕を失った格下に斬りつける。奴の胴体は真っ二つになり腰から上が川に落ちた。

　ツートンは更にレーザーソードを構え突っ込んでくる。オレはシールドを投棄し４７ミリ拳銃を抜く。５発撃ったが火竜の装甲は抜けない。その時ツバキが嫌な報告をして来た。

「ＶＴＯＬ輸送機が接近中です。ガンシップと思われます。計５機。接触まで１２０秒。小松基地からのスクランブル。２機発進準備中。到着まで約４５０秒。舞鶴沖の空母〝しらさぎ〟より攻撃機５機が発艦準備中。到着まで７２０秒」

　航空支援は間に合わない可能性が高い。

　斬りかかって来るツートンに向かって脚部のバーニアを吹かす。

　盛大に水しぶきが上がって視界を塞ぐのだが構わずヤツを突く。

　偶然？

　いや狙っていた。実剣は奴のコクピットを貫いていた。ツートンの火竜は水しぶきを上げながら倒れた。

「こちら、クロ０１（まるひと）、火竜２機撃破するも脚部損傷の為合流には時間を要す」

「クロ０２（まるふた）了解。こちらも火竜を１機撃破。きゃ」

「どうしたクロ０２（まるふた）」

「対峙しているトリプルDはハドロンではありません。この野郎、生意気なんだよ」

　ハドロンではない。

　外観は酷似していたが、別物だというのか。

「クロ０２（まるふた）、実剣が2本折られました。推定出力レプトンの２倍。強力なビーム砲を装備しています。左腕が実剣と共に溶解しました」

「何とかしのげ。直ぐに行く」

　玲香の乗ったレプトンを圧倒する高性能トリプルDとは何だ。

　嫌な予感しかしない。

「ツバキ。病院まで飛べるか」

「可能ですが、推進剤を全て使用します」

　つまり、そこまで飛べばオレは動けなくなる。しかし、他の選択肢はない。

「ツバキ、飛ぶぞ」

「了解しました」

　背中と両脚のバーニアを噴射して、オレは空高く飛び上がった。　

　その時、遠方に接近してくる輸送機を見つけた。

「ツバキ。輸送機を撃てるか？」

「空中での射撃は弾道が安定しません。非推奨です」

　まあそんなもんだ。

　前方に、銀色のトリプルDとクロ０２（まるふた）が戦闘しているのが見えた。玲香は片腕で実剣を振りよくしのいでいる。

「距離１５００。アンノウンにロックオンしました」

　玲香が打ち込める隙を作るため７６ミリを撃ち込む。アンノウンの足元に着弾した。当然、奴はこちらに注意が向く。

　その隙を見逃さず、玲香は実剣で打ち込む。しかし、片腕で払われた。アンノウンは着地したオレに向かってビーム砲を放つ。それは右肩の火砲に命中し爆発した。

　オレは尻餅をつき、玲香も片膝をついている。左脚が動かない機体と左腕を失っている機体。数は２対１になったが、こちら側の不利には変わりがない。

　更にまずいことに、到着したＶＴＯＬ輸送機が低速で旋回を始めた。オレ達を中心に反時計回りに旋回する。左側の腹が開き、火砲が顔を出す。

　このままだとガンシップの集中砲火を受けてしまう。

　正に絶体絶命という状況だった。