ツテ



青年「いってえ、、」




激しい頭痛に、視界が歪む。




青年「ここは、、






何処だ。」




霧の様なもやに何とも言えない獣臭。




獣臭と言っても獣臭が分かる訳ではないのだが、




いかにも臭い。




あからさまに自然的な臭いではない。






何処なんだよここ、、




服の裾で鼻を隠すようにする。




あれ、、、




俺は何してたんだっけ、、






俺は、、




青年「俺は、誰だ、」






男性「何やってんだ!!」




髭の似合う男性は罵倒しながらテーブルを蹴る。




あの事件から新たな進展は無く、




このままでは捜査事態が、




打ち切りの可能性すらあり得る。




男性「落ち着いて下さいよ、、先輩。」




部下だろうか、上司の倒した山積みの資料を




ゆっくりと片付ける。




男性「しょうがねえ、、あいつに当たるか、」






ここは特殊捜査係。




特殊捜査とは名ばかりな




原因不明の事件等を取り扱う、




左遷された者らの終着駅だ。






部下「先輩キレるとすぐ物に当たるんだから、、」




特殊捜査室は物置小屋のように、




資料や参考文献等がそこらじゅうに積まれていて、




それは今にも倒れそうだ。




部下「あぁ、ああ、」




部下は山積みの資料の下敷きになった。






古びたアパートは錆びだらけで、




大きな地震でも来れば一気に崩れそうだ。




先輩「何でこんな奴頼らなきゃいけねんだか、、」




バツの悪そうにアパートの一室の扉へと手をかける。




鍵は開いていて、中は汚いゴミだらけの部屋。




埃っぽくて、じめじめとした




何とも言えない空気漂う。




先輩「掃除しろよ。




カーテンも開けろ。




電気付けろ、、」




彼の怒りゲージが既に範囲内を越えようとしている。






「ふふふん、ふん、、」




男はパソコン越しにいやらしい動画を見ている。




「おぉ、まじかよ、、






こりゃ普通のヤツより抜けるぜ、、」




ティッシュの箱に手を伸ばすが、




ティッシュの中身は空だった。




「チッ、良いとこなんによ、、」




男が椅子から立ち上がろうとすると同時に、




自室の扉が勢い良く吹っ飛んでくる。




「あ~ぁあ、、」




もう、お馴染みの光景かの様に男は立ち尽くす。






警察「盗撮魔!!




部屋は綺麗にしろって、




あんだけ言っただろうが!!」




男は呆れた様に頭を抱える。




「はあ、、




またか、、」






外を駆ける音がすると、玄関が勢い良く開き、




「あんた、また騒いでるんかい!!




ここん家が壊れたらどうすんの!!」




と、せんべい片手におばさんが入ってきた。






警察「これはこれは、




マドモアゼル。




今日も美しく可憐ですね、、」




おばさん「あらやだ、、




刑事さん来てたの、、」




せんべいを背中に隠し、乙女顔になる。




警察「これ、良かったらどうぞ。」




手土産に持ってきた老舗のせんべいを渡す。




おばさん「あらっ、いやだ、、




いつも悪いのね、、」




照れながらも女らしく受けとる。




警察「何か変わった事があれば、




いつでもこの私にご連絡下さいませ。」




おばさん「はいっ、、」




おばさんは自分の服に身をやると、




恥ずかしそうに部屋を後にした。






男「あのさ、、




大家を手懐けすんのやめろよ、、」




呆れ顔で終始、今までの様子を見ていた男が言う。




警察「お前。




最近流行りのあのURL知ってるか?」




顔付きが変わるのを見て、男は深い溜め息をする。




盗撮「普通にさ、、




あの、頼むとかは出来ないのかな、、」




警察「馬鹿野郎。




お前みたいな犯罪者の手を借りるなんて、




警察としての俺の立場はどうなるんだよ、、」




メンチを切りながら顔を近付け威嚇する。




盗撮「はいはい。」




ティッシュの在庫を棚から取ると、




パソコンの前まで戻る。




デスクトップに戻り、ファイルの中から、




事件に関する記事や被害者のリストを出す。




盗撮「被害者達の消える瞬間とか見た?」




飲み物を片手に取り口を付ける。




警察「そんなもんも見れるのか?」




唖然とした表情で固まる。




警察「いやいや、、




そもそも消えるとか、、




失踪事件だから。




あくまで、、」




おどおどしく身振り手振りで説明する。




盗撮「それが違うんだよ、、






俺もまだ数人の奴しか見れて無いんだけど、




確実にサイトを観覧した瞬間に消えたんだ。






この間。俺もクリックしたんだけど、ハズレた。






けど、ダチがたまたま自分用に録画してて、






それが俺のパソコンに来てよ、、






自分なりに調べたんだけどな、、」




男の肩に軽く手を乗せる。




警察「そうだったのか、、




すまない。




俺がもっとしっかりとしてたら、、」




肩に置いた手に力がこもる。






盗撮「いいんだ、、






でも、必ず俺があいつを助けるんだ、、






らしく無いぜポリ公。




お前はめちゃくちゃな感じがお似合いだよ。」




コピーしたUSBのメモリーを渡す。




警察「馬鹿言うんじゃねえよ、、






大切な人を喪う奴の気持ちが分からねえ程、




こんなに不甲斐ねえもんはねんだからよ、、」




軽く手を上げて部屋を去る。






盗撮「いやいや、




結局何かいい感じで終わったけど、




俺の部屋の扉、、」






部下「先輩~。




やっぱりここだったんすか、、」




肩で息をしながら、俺を見上げる部下がいた。




先輩「ったく、お前は俺にGPSでも付けてんのか、




俺の周りには変態しか居ねえな、、」




貰ったUSBを部下に投げる。




部下「また彼に協力してもらったんですか?」




投げられたUSBを何とか掴む。




先輩「お前が使えねえからだよ、、」




煙草に火を付けながら歩く。




部下「歩きタバコは良くないですよ。」




差し出された手には携帯灰皿があった。




先輩「はいよ、、」


















































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る