むりやりの送り迎え

 当たり前だが移動にお金をかければかけるほど早く到着できる、しかし今回は急いでいるわけではないので無難な手段ですませる。




「よくぞ遥々わざわざ来てくれました」


 わざとらしく感謝した演技をして兵士が迎えてくれた、ギルドカードを軽く見せるとほぼ素通りできたので入国して王城に到着してその日には王族に謁見できてしまった。


「早くね?」


「しょうがないじゃない今回は割と緊急なんだから」


 謁見の間まで兵士がついていたが王族が言っている間に退出していたので周りに目が無いためため口で話す、そのことについて咎めるどころかため口で返してきた、一国の長がそれでいいのかと疑問に思う……。


「とにかく仕事の内容は依頼書にあった通りよ、手続きとか権限とかはこっちで用意するから明日からよろしく、部屋は用意したから今日は休んで下さいな」


 姫様が手をリズムよく叩くとメイドがいつの間にか背後に現れて部屋に連行された、部屋は無駄に高そうな家具がたくさん自己主張しており、平民のユウキには目に毒な部屋だ。


「いやこんなの寝てしまえば同じだ……」


 あまり部屋の中を見たくないので近くにあるソファで横になる、ソファでも十分に眠れる柔らかさと広さがある。




(普通にベットで寝ればよくないか?)


(ソファで寝るはどうかと思うが?)


(しかしこれいつも寝ているものより柔らかいですね)


「うるへぇ!」


 後ろで何か言っているが一括してから気合を入れて眠ることにした。




「起きろ寝坊助!」


「ファイナルアタックラ……、あれ?」


 後頭部の衝撃で目が覚める。


「ずいぶん変な夢を見ているのね」


「ウッス、というか姫様が直々ですか?」


「そうよ、部下に変な仕事をさせたくないし」


「さいですか……」


 ユウキを起こすだけの仕事が変な仕事扱いされているようだ。


「そうよ、とりあえず部下を用意してあげたから今から向かいなさい、それからコレに必要な物はあるから、あと見た目を18くらいにしておきなさい」


「わかりました」


 姫様からもらった鞄の中を確認すると、女性用の特殊兵士の制服と証明書、それから少しばかりの金貨が入っていた。


 ユウキが指示された通りに18歳の姿に成長してみると制服が少し小さかったので16歳まで戻ると何とか入った。


「なに嫌味?」


「えなんで?!」


 姫様の視線が胸部に刺さる、姫様自身も十分な物をお持ちだろうに。




 目的地までの移動は馬車を使うらしい、しかし至急された馬車は突貫で作られた物のようで壊れる前提で作られたそうだ。


 それにメイドに無理やり押し込まれ、ドアが閉められると同時に馬車が発進される。


「起きてから嵐だよ……」


「貴女も災難ですね」


 1人かと思っていたが不幸な人間はユウキだけではないようだ。

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