南の島では無かった頃
「こういう謎の物は魔力を流すに限る!」
「え、そういのって探査系の魔法を使うか鑑定士に任せるのが普通じゃないの?」
2人ともこういったことは基本的に専門外なので、後衛支援や斥候調査などは基礎しか知らないのでこういったものは基本的に他の人に任せるのが2人の普通である。
「いないのだからしょうがないよ」
「他に知っている人もいないし良いか」
しかし急に飛び出した2人について行く人がいるわけもなくまた本来止めるべき役目のマキナもユウキに対しては基本的に全肯定なのでこの場を収める人はいない。
マキナの賛成もあり、早速何かしようと手を近づけると、まだ何もしていないにも関わらず液体が泡立ち一点に集中していった。
「これは開けるだけで良かったのかな?」
「どうなんだろ?」
「復活だぁ!」
陽気な声と共に女性が飛び出すが下半身はまだ未完成なのか半身浴の状態になっている。
「……え、女?!」
ユウキ達を見た瞬間に一気にやる気をなくしたのか振り上げた手をだらしなく下げる。
「私たちじゃ不満なんですか?」
「あたりまえよ、私の封印を解いた人に嫁入りするつもりだったのに……」
「え、お母さんが増えるの?」
「えうそぉ、親子ぉ?!」
「まぁそうだけど?」
実の親子ではないのだが、マキナがあまりにも言うのでその度に否定するのも面倒になっていきもう受け入れている状態である。
「いえでも私なら同姓でも子はできるわ!」
そう言って勢いよく飛び出すと彼女の下半身は人の物ではなく大きな蜘蛛になっており、8本の脚で石の上に立ちユウキ達を見下ろす形になる、彼女が出たからなのか中に入っていた液体が無くなっていた。
「そういえば今って帝暦何年?」
「帝暦ってなんですか?」
「確か歴史の授業で聞いたことがあるかも?」
マキナは授業をまともに受けていたため記憶の中から何とか捻り出そうとしたが、ユウキはしょっちゅう授業を抜け出していたため初めて聞いたようだ。
「え、まってそれじゃあ私は何年寝ていたの?」
下半身が蜘蛛の女性が慌てて部屋から出てすぐに崩れ落ちた。
「そんな、全部……」
「あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないわよ全てが無くなっているのよ、幸せな生活をするために貯めてきた物が全部風化している……、ねぇお願いがあるの……」
先ほどまでの元気が一気になくなり絞り出したような声をしている。
「な、なんですか?」
「私を殺してくれないかしら?」
「え、何もそんな……」
「この家はね、日差しとかいろいろ考えて作ったの、でもねここって地面の中でしょう、それくらい解るわ、時間がかかりすぎたのよ……、途方もない時間が……」
(帝暦ってそんなに古いの?)
マキナに小さく聞いてみる。
(資料が全然残ってないくらいには)
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