勝手な解決

 水晶から肉のうごめくような音がするかと思うと人の手が生えてきた、肘まで生えた後一度止まり、それから一気に水晶から少女が吐き出される


「終わったの?」


「ノアっち!」


 ジャルが勢いよく飛び出して水晶から吐き出されたノアっちに抱き着く。


「え、ジャル?!」


 ノアっちが驚いているもののジャルにはしっかりと抱き着いている。




「ウチの子を核にして結界を構築してみたけど、良い感じに完成したわね」


 ノアっちの母親は何もない空中を眺めながら何かを読んでいるようだ。


「ワシは結果を見たから帰る、お前らもとっとと帰れ」


 大きな足音を立てながら村の代表が帰っていった。


「ノアっち~」


 ジャル達は久々に再開できてうれしかったのかずっと抱き合ったままだ。


「とりあえず、依頼達成……帰ろ帰ろ」


「そうだね」


「二人の時間を邪魔するのは引ける私も退散しますねー」


 3人も静かに洞窟から抜け出した。






「あー、これなんて報告しよう」


 面倒な気分になり、荷物を回収して早々に帰宅したユウキは、何とも言えないような脱力感の中で提出する書類に四苦八苦していた。


「もう適当でよくない?」


 マキナは提出する書類を適当に時系列で書き上げでいた。


「確かに見るのはレティさんだけだけど記録はずっと残るからね、変な記録は残せないよ、昔の記録も結構レティさんが修正してたし」


「え、そうだったの?!」


「直さなくてもいいのに、いちいち修正して記録してるからねー、この前とか文章全部変えてた」


「私も次からもう少し丁寧に書こう……」




 後日、ギルドで適当に時間をつぶしていたある日、マキナがそういえば思い出したかのように言い出す。


「お母さーん、やっぱりこの前の村から出禁だってさー」


「別に行く予定もないし、通り道にもならないし……あーでも依頼で近く寄る時は不便かなぁ」


「その程度なんだ」


「オイ、ユウキ、出禁ってどういう事だ!」


 たまたま近くにいたレティが慌てたように駆け寄る。


「この前のあの村ですよ」


「あぁ、あの村か……」


 あの村と聞くとレティが落ち着きを取り戻した。


「レティさんは何か知っているんですか?」


「うーん、まぁ…あれだ、限界集落なんだよ、財政的にも人的にも、昔に金は出さない癖して要求が大きい人がいてね…それでその村に関してはあまり受けないようにしていたんだ」


「あぁ、だから私に直接言ってきたのか」


「だろうな、全く、依頼に使者使うって、貴族じゃあるまいし」


「もしかして、知り合い?」


「いや、学生時代に隣のクラスだった程度の知り合いだ」


「うわっ、微妙」

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