逆召喚

「……さて今回私は使い魔とやらの契約のために呼ばれたんで間違いないな?」


「はい、出来るだけ強い奴と契約したいので全力で召喚しました」


「それはつまり契約は私でなくても問題はないよな?」


 イケメンがまっすぐこっちを見ていて何か面接みたいで嫌だなぁ。




「まぁそうだな、とりあえず力量でも試してみるしかないだろな」


 いきなり物騒な事を言い出してきた、でも確かにこの手の戦闘はある意味お約束ではある、このイケメンがどれくらい強いのかは解らないが自分だってこの学校で誰よりも強いんだ、それに最悪殺したりはしないだろうから提案に乗る事にした。


 椅子を元に戻してグランドに戻ってみると今は自分が以前に助けた女の子の番になっていた、もし僕が主人公の異世界転生物ならば彼女はヒロインになるのだろうか…、以前は彼女の方が強かったけど。




 彼女が詠唱し魔法陣が輝く…、今一瞬寒気がしたような。


 魔法陣から人の物のような白い手がゆっくりと伸びてくる、彼女はゆっくりと出てきたの煩わしかったのかその手をつかんで思いっきり引き抜こうとした、しかし手はビクともせず逆に彼女の手を掴んで引きずり下ろしていく、さらに複数の手が伸びて来て彼女を魔法陣の中へ引きずり込んでしまった。


 僕は何とか阻止しようとしたが距離があり全力で走ったが間に合わなかった。


「あぁ……」


 声が出なかった、ショックで声が出ないなんて地球にいた頃も含めて初めてだった……、そういえば横にいるこのイケメンのせいで時間を取られて助けられなかったな、ダメだ掴みかかる気力もないしそもそも彼のせいにしてはいけない、ただただ魔法陣とイケメンをぐるぐると見続けるしか出来ない……。


「何やってんだ、助けろよ?」


 お前こそ何言ってるんだどうやって助ければいいんだよ…。




 イケメンは一度やる気がなさそうに溜息をついた後に。


「まだ魔法陣が光ってパスがつながっているだろ、お前がさっきの女を召喚すればいいだろ?」


 なんてめちゃくちゃな方法だ、でもやらないよりましだやってやる、足を引きずりながら魔法陣の元へ向かう、頬を思いっきり叩いて気合いを入れる。


「戻って来い!、エリフェス!」


 呼び捨てにしたり詠唱とか飛ばしたけどこの際どうでもいい、彼女を強くイメージして出鱈目に魔力を注ぎ込み魔法陣に手を伸ばして叫ぶ。




 真っ直ぐ伸ばした手が何かを掴む。


 このぷにぷにとした感触は間違いない、勢いよく引っ張り上げる。


 一気に引き上げて確かめてみると確かに掴んだ物は確かにエリフェスの腕だった……、でもなんでエリフェスの顔があんなに遠いんだ、おそるおそるつかんだ腕を見ると、その腕は人とは思えないほど異様に長かった。


 思わず手を放しそうになるが、ここで手を放してしまうともう二度と会えない気がしたので少しだけ掴む力が緩むがすぐにしっかりと掴みなおす。


「私、私は……」


 消えそうなほどか細い声がした、いつもなら聞き逃すような小さな声でも今ははっきりと聞こえた、こんな弱弱しい声は初めて聴いた、腰を少し落として長い腕を一気に全力で引っ張り上げる。


 すこし手間取ったが何とか全部引っ張りきる事が出来たようだ。




「いやぁぁぁぁあああああ!!!」


 周囲からいくつもの悲鳴が聞こえてきた、大振りで引っ張ったため姿が見えなかった、悲鳴が周囲から聞こえてきたので慌てて振り返るとエリフェスはちゃんといた。


「どう、いう…ことだ…」


 魔物となって……。

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