旧校舎の敵

「本当に何にもないわね」


 声を消すように机を強くバンバン叩く。


「お母さん、うるさい……」


「いやーこうやったらまた何か来ないかなーって」


「あーうん」


 机と椅子くらいしかない教室を捜索しながらユウキは時折机を叩いていた、さすがに最初よりは手加減していた、すると遠くの方から声が聞えた。


「来たね」


「みたいね……」


 今度は大型の少し前かがみになった真っ黒な何かがいた。


「また黒い、とりあーえず」


 ここの校舎はとても頑丈のようなので遠慮なく炎を放つ、真っ黒な何かはあっという間に崩壊して鍵を落とした。


「お、ドロップ」


 そこそこの火力を出したにも関わらず焦げ臭い匂いがする程度で壁や床は全く焦げていなかった、真っ黒な何かがいた炭から鍵を拾い上げる、さっき拾った鍵と重ねて見ると別の鍵だと分かる。


「お、別の鍵だね」


「えーまたさがすのぉ」


 マキナは心底嫌そうにしている。


「全部の鍵を集めないと出られなかったりして」


「えぇーメンドクサイぃ」


「でもそうしないとここから出られないかもしれないよ」


「うぅ…」




 再び鍵が使える部屋を探す、今回は隣の教室が開いた。


「近くてよか…った」


 また何もないさみしい部屋だと思ったが黒板にあたる部分に大きな旭日旗があった。


「なんでこれがここに……」


 さらにこの教室内には他の教室と違い、いくつか見覚えのある物がありとりあえずこの教室が特別教室だという事がわかる。


「ここはなんの教室だろう?」


「ここは…なんだろ、生活、かな?」


「生活?」


「まぁ私も詳しく説明できないからそんな教科があると思ってくれたらいいよ」


「なんかアレ…すごくまぶしいんだけど」


 アレ、とは旭日旗である、実際には光ったりはしていないがなぜかアレがまぶしく見える。


「お母さん、知ってるの?」


「うん、私の前世の国を表す物だね」


「私は昔に教科書でみたくらいだし」


「昔、ねぇ」


「私がお母さんと会う前の生きていた時にね」


「よく覚えてたね」


「たまたまだよ、あれを見たら思い出しただけだし、私も見たことがあるだけで何かかは忘れたし」


「いままでほぼ何も無かったのにこれがあるってことはきっとこれには意味があるはずだよねー」


「だよねー…うーん、太陽、とか?」


「太陽、うーん確かに言われて見ればそう見えるかも」


「とりあえずここでも騒音を出すかなー」


「えぇ、また出すのー」


「でもそれ以外何も進まないよね」


 マキナが悩んでいるとまたあの真っ黒な何かが向かってきた。


「どうやら時間経過っぽいね」


「じゃあ大きな音出さなくても良かったじゃん…」


「何事でも検証だよ」


「うぅ、そうだけどさぁ……」


 マキナがもやもやした気持ちを魔力に変えて目の前にいる真っ黒な何かにぶつける、真っ黒な何かはやはり叫び声を上げて消滅した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る