旧校舎の中身

 グランドに発生した霧は徐々に濃くなっていき、それに比例してか魔力の濃度が高くなっておりまるで全身に重りをつけて水の中を進んでいるようで1歩進むのも辛い。


「重っ…」


 辛いがその程度で進めない訳ではないため苦労しながらなんとか校舎までたどり着き中に入ると全身にかかっていた枷のような物は無くなり危うく倒れそうになった。


「大丈夫かー」


 まだ校舎にたどり着いてないマキナに声をかける。


「ちょっとキツイー」


 まだ半分くらいの距離の所で四苦八苦していたのでユウキは手を伸ばしてマキナを引っ張り上げる、思っていたよりもすんなり引き寄せる事ができた。


「ぷはぁ、お母さんありがと」


 改めて校舎の中を見ているともう何十年も使われないような寂れたような感じがする。


「なんか不気味、マニアは好きそうだけど」


「長く居たくないんだけど……行くしかないよね」


「依頼だからね」




 いつの間にか閉じていた侵入口のドアを空けてみようとしたが鍵が掛かってしまったようで開かなくなっていた、探索を優先させるのでここが開かなくても現状問題が無いので探索を始める、先に何がある分からないので警戒しながら進んでいく。




「照らせ…」


 時間が夜なので学校からの光が届かなくなってきたので頭上に明かりを点ける。


「あやっと見えるようになった」


「え見えなかったの、よくついてこれたね」


「お母さんの位置なら大体わかるよー」


「そうなんだ」


 廊下の探索を続けるが古い建物以外には特に変わったところはない、片っ端から教室を見て回ることにする。




「これって古いタイプの椅子と机だよね、少ししか無いって聞いてたけどたくさんあるね」


「どゆこと?」


「このタイプの椅子と机はまだ学校ができる前に、この学校を作った人が最初に教える時に使ってた物って言われてた気がするよ、数はたしか10個前後って聞いた事があるけど……、この教室にあるだけでも余裕で越えてるよね」


 おかしいとばかりに教室にある机などを調べる。


「あ、これ」


 机を調べ始めたマキナが驚いたような声を上げる。


「どうした!?」


「この机の枠組みに鉄が使われる」


 枠を軽く指で弾きながら信じられないといった風に答える。


「あぁ、そこか」


「そこ?」


 この世界の金属はまだまだ高価な物でまずは武器や防具などに回されるため一般にはあんまり出回ってこず、学校にはなかなか回ってこない、そのためここまで多量に武具以外に金属が使われているのに驚いている。


「ま、ここは別の世界とかと思った方がいいよ」


「う、うん」


 マキナがこの世界との微妙な変化に驚く以外特に変わった所は無かった。


「次は二階かな」


 二階は特別教室の階のようだ、しかし一階と違って扉には鍵が掛かっている。


「だめ、こっちも鍵がかかってる」


「こっちもかー」


 部屋を調べていくがどれも鍵が掛かっていて開きそうにない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る