面倒なので命名
「というか支払いがお金じゃないんだ…」
「そうですね、通貨や手形ですと暫くすれば価値がなくなったりしますからそんな不安定なものより物資の方がよほど価値がありますよ」
会計は実に原始的だった、遺跡のメイドが懐から書類を取り出してミルシアに渡す。
「ではこちらにサインお願いいたします」
紙を受け取り軽く読んだあとミルシアのメイドからペンを受け取りサインをする。
「これで問題ありませんわね?」
「ありがとうございます、では【XXXU-0W21S】の方はどうしましょうか?」
「そうですわね…えぇっとぉ…」
どうやら【XXXU-0W21S】を上手く発音できないみたいだ。
「ええぇい、今から貴女はミザリーですわ!」
「ミ、ミザリーですか…」
「ええそうよ、貴女の今の名前が言いにくくてなりませんわ」
「【XXXU-0W21S】普通に言えるけど?」
「なんでユウキは発音できますの?!」
「いや、普通に言えるけど…」
「貴女が普通にってことは私にはできませんわね」
「え、それどういう事?」
「貴女みたいな存在が非常識みたいな物を基準にされても困りますわ」
「あ、いや、その…ごめん」
非常識とはなんだと言い返そうと思ったが間違ってないのもあり言葉が詰まってしまった。
「落ち込み過ぎではありません?」
「なんか言い返せなくて…」
「自覚があるのなら今度から自分が出来る事を誰でもできるような言い方は自重してくださいな」
「ア、ハイ」
「では一通り見ましたし部屋に戻りましょうか」
「かしこまりました、それでは出口まで案内いたします」
遺跡のメイドに案内されて来た道と違うルートを通っていき地下の工場見学は終わりになった。
「さて、見学も終わりましたし、さっさと帰りましょう」
「お嬢様、流石にこんな時間では無理かと…」
すかさずミルシアのメイドが時計を出しながら答える。
「あら、もうこんな時間なのね…では明日すぐに出発しましょう」
「かしこまりました、それではすぐに夕食の用意をいたしますね」
遺跡のメイドはすぐに夕食を用意しに向かった。
「それでは私達は部屋に戻りましょうか」
「そうだね」
部屋に戻ると既に夕食の用意はできているようで、その速さに驚きながらもユウキ達は早々に夕食を済ませて一日を終わった。
翌日の日の出と共に目が覚め、いつの間にか馬車に乗り込んでいた。
「なんかもうあっという間だったね」
「ユウキ、貴女は今朝から何が起こったか全部把握できてますか?」
「いや、寝ぼけていたからあんまり……」
マキナに至ってはまだ寝ている、いつの間にかミルシアのメイドが済ませてしまったようだ。
「私達貴族、といっても私もそこまで貴族らしくないですが、社交界などでは一瞬の時間すら気が抜けないのです」
急に真剣な顔になるミルシア。
「あ、なんかごめん」
「別に構いませんわ」
「私は貴族とかとは無縁だからねぇ」
「あら、そんなことありませんわよ?」
さっきまで真剣な顔をしていたミルシアの表情が緩み声のトーンが上がる。
「え、でも私はこの国の貴族とに血縁とかないんだけど…」
「あら、今時純血の貴族なんて、それこそ王族か無駄に格式高い貴族どもくらいしかいませんわ」
「へーそうなんだ」
「つまりあなたも気がついたら貴族になってるかもしれませんわよ」
「マジですか…」
「マジですわよ、というかこんなに暗くするつもりでは無かったのですけど、そんなことよりも行きはあんまりできませんでしたがまた《名も無きファラオの遺産》でもやりましょうか」
「そうだね」
そうして帰りは特に何も無く快適に学校に帰りついた。
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