難攻不落のこころじょうを攻め落とすのは、こんなにも難しいのですか?

柊木創

第1話〈こころさんに告白〉

 僕は柊木ひいらぎまもる。特段何か優れた特技が

あるわけではないごく普通で平凡な学生。

だけどそんな僕でも、今青春の真っ最中だ。

そして僕には、好きな人がいた。

緊張感と、恐怖。さまざまな感情が混在する中、

今、僕は彼女に告白する。

「こころさん、僕と、付き合ってください…。」

僕は意を決して、こころさんに告白した。

「………ごめんなさい。」

「私は、誰かと付き合う気はないので…。」

「あ、ちょっと、待って……。」

行ってしまった。ああ、キツイなあ…。

僕はこころさんに告白したが、あえなく振られてしまった。

まあ、僕とこころさんは別に仲がよかったわけではないので、

仕方ないことだとは思うが…。

それでもやはり、振られたら、苦しかった。

嫌われてなければ、いいんだけどな……。

僕は思わず泣いてしまいそうだったが、


それをぐっと堪えてなんとか止めた。

僕は彼女の心を射止めることはできなかった。

僕の初恋は、儚く散った。


「はぁぁぁぁぁぁ……。」

僕は昼休み、空き教室で一人うなだれていた。

辛いなあ…。でも、諦められそうにないなあ…。

僕はこころさんに振られてしまったが、諦められなかった。

そりゃあそうだ。だって、僕は彼女のことが好きだったのだから。

本当に好きなんだったら、振られたら辛いに決まってるし、

悲しくて、苦しいに決まっている。

きっと、しばらく忘れられないはずだ。

いや、もしかしたら、忘れることなんてできないかもしれない。

もし、そう感じないのであれば、それは、本当に好きといえるのだろうか。

でも、このままずっと好きでいたとして、付き合える未来はあるのだろうか。

こころさんは有名企業の社長令嬢で、成績も優秀、容姿端麗でもあり、

おまけにスポーツも万能ときたもんだ。平凡な僕とは、あまりに釣り合わない。

こころさんは、所謂高嶺の花ってやつだった。

誰も手が届かないような、そんな存在。

これまでに僕以外の人もたくさん告白している人はいた。

だが、当然のように、全員惨敗。付き合えた人は誰一人としていなかった。

そして今日、この日、僕もその中のうちの一人に加わってしまうことになった。

「私は、誰かと付き合う気はないので…。」

先ほどのこころさんの言葉が、僕の頭の中にこだまする。

「はあ、こころさん…。」

僕は思わず、こころさんの名前を呟いてしまっていた。

僕はやはり、頭の中がこころさんのことでいっぱいらしい。

辛いから何も考えたくなんてないのに、


脳裏に浮かぶのはこころさんのことばかり…。

「はあ、こころさん…。」

僕はまた、ほぼ無意識に彼女の名前を口にする。

「何…?呼んだ?」

「いえ、別に呼んだわけじゃないです…。」

僕は頭の中がこころさんのことでいっぱいだったため、

それを振り払うようにこころさんの名前を口に出していただけだ。

別に呼んだわけではなかった。

いや、待て……。僕は一体、誰と会話しているんだ…?

僕は一人でここにいたはずだ、なぜだ。

ついにおかしくなったのか…?

いや、そんなはずはない。なぜなら、今、


確かに僕へと言葉が向けられていたのだから。

そして、聞き覚えのあるこの声…。

僕はおそるおそる、顔を上げてみると、そこには……。

なぜか、こころさんがいるのであった……。

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