それが魔法少女
魔物、と呼ばれる存在がいる。
魔物は普通の人の目にははっきりと映らない。
ある種の亡霊や怪物的な形にしか認識できず、様々な怪異現象のもととなる。
口裂け女。メリーさん。テケテケ。トイレの花子さん。動く人体模型。
サキュバス。ドッペルゲンガー。セイレーン。グリフォン。
どれか一つは聞いたことがあると思う。
それらの噂を、そして被害を生み出す元凶が魔物だ。
普通の人にははっきり認識できない魔物は、もちろん、普通の人には退治することができない。
――だから、普通じゃない人が相手をする。
それが魔法少女。魔物と戦う少女たち。
「
「うん、わかった!」
私は剣を手に、鎌鼬という魔物に向き合う。
魔法少女には特別な力が与えられている。
魔法の力で身体能力を向上させ、魔法の武器を振るう。武器は人によって違って、私の場合は剣だった。
そして剣を振るいながら、魔法を扱う。
魔法というのは、一人に一つ与えられた特別なものだ。固有魔法と呼ばれている。
私の固有魔法は[外傷治癒]。悪意を持って加えられた傷を癒すことができる。
そして――これは戦闘には関係ないのだけれど。
魔法少女の特権といったら、なんといっても、変身だ。
私の魔法少女としてのコスチュームは、ヒラヒラが沢山ついたとっても可愛い服。子供っぽいけれど、魔法少女としてはあるべき姿だ。剣にはちょっと似合わない気もするけど、でも、気に入っている。
コスチュームにも各魔法少女で個性があって、人によっては魔法少女にはあんまり見えないのもある。だけどみんなとても個性的で――たまに他の人のものが羨ましくなったりもする。
「はぁっ!」
剣を振る。鎌鼬には当たらない。
忠告通りかなり素早い魔物で、普通に振っても当たりそうになかった。
「彼方、何かで一度足止めするんだ。その隙に叩こう!」
「うん、わかった!」
ちなみに、さっきから色々とアドバイスをくれるこの子は――。
まあ、妖精さんみたいなものだ。こういう妖精さんは、スウィーツと呼ばれている。……紛らわしいけれど、お菓子じゃない。お菓子の形をした、妖精さんだ。食べてもおいしくはないらしい。
スウィーツは私たちのサポート役兼監視役みたいなもの。私たちの戦闘をサポートしてくれる一方で、私たち魔法少女が何か非道なことをしないか目を光らせている。
魔法少女が人の道に反したことをして、それがスウィーツにバレてしまった場合、その人は魔法少女でいられなくなってしまうらしい。
そんなことにはなりたくない。
他の人にひどいことはしたくないし、何より――。
これは、人を守るための力だから。
私は魔法少女として、みんなの平和を守るために戦う。
「だから――ごめんね。魔物は、倒さなきゃいけないから!」
私は自分の心苦しさを吐露しながら、鎌鼬に向けて剣を振り下ろした。
みんなが、平和に暮らしていられるように。
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