第31話 イメチェン

 昨日はあのままふざけ合い、深夜1時を過ぎたところでお開きとなった。山下は、通話をする前の心の闇が消えていたことに気がついた。

(…高田さんと話してると心が前向きになれる。)

 高田の内面的魅力にも山下は魅了されていた。よし、と気合を入れ、洗面台に向かった。


”「姿勢も大事ですか、前髪もおでこを出すようにすると爽やかな印象になりますよ!」”

 

 昨日高田に言われたアドバイスを実践することにした。ワックスをつけ、いつもは下に流すところを掻き揚げ、額を露わにさせた。

(…これでいいのかな。)

 スマホで人気俳優達の髪型を参考にし、なるべく自然になるよう全体を整えた。

(…なんか不思議な感じ。)

 髪型を変えただけで随分と印象が変わった。高田が言うように、以前よりもずっと爽やかな印象だ。視界が開けた事によって気分も少し明るくなれた。山下は気分良く朝食を食べ出社した。


「おはようございます。」

「えっ…おはようございます…。」

 いつもは挨拶をしても無視を決め込む受付嬢が、目を見開いて挨拶を返してくれた。

「ねぇっ、あんな人居たっけ!?」

 遠くで内容までは聞き取れないが、受付二人がなにやら慌てて会話しているのが聞こえた。


「おはようございます。」

「おぉ!?おはよう。…結希、だよな?」

「?…はい。」

「びっくりした、違いすぎて誰かと思った。イメチェンしたんだな、いい感じだぞ!」

「ありがとうございます。」

 上司に太鼓判を押されたが、同性に言われてもあまり嬉しくはなかった。だがその日は周りがざわつき、男性社員はそれぞれ褒めてくれた。女性社員は何も言ってこなかったが、皆驚いていた。

(本当に周りの反応が変わったな…。高田さんの言うとおりだった。)

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