第8話 計画
「田中さん、すみませんが先日の広告案に訂正が入ったので木曜中に作り直しをお願いできますか?」
美鈴は恐る恐る広報のお局に声をかけた。
「はぁ!?前にA案とB案どちらかで決めてもらうって言ってたわよね。なんで更に訂正されなきゃいけないわけ?しかも木曜って、明日じゃない!」
案の定彼女は金切り声を挙げた。広報に長年陣取っている田中まさみは、自分こそが裏で仕切っていると思っている典型的なお局様だった。
「すみません…。微調整なので田中さんならすぐに作ってくれると佐藤先輩が言っていたものですから。」
イケメンの佐藤をダシに何とか機嫌をとろうと美鈴は必死だった。
「佐藤さんが言うなら仕方ないけど…。いいわよね、あなたは。営業で先方にヘラヘラしてればいいんだから。」
訂正書類を奪うように美鈴から取り上げ、最後にチクリと嫌味を言った。
(はぁ…。)
無事田中に書類を渡した美鈴は朝から気疲れでヘトヘトになってしまった。
(あぁ、山下さんのボイス聴きたい…癒されたい…。)
「あ、高田。書類田中さんに渡してくれてありがとうな。」
「先輩、私あの人苦手です…。」
「すまん、疲れさせちゃったな。まぁー、あの人好きって人は中々居ないよなぁ。仕事は早いんだけど…。」
どうやら佐藤もお局様は苦手なようだ。
「金曜なんだけど、親睦を深める意味でも山下さんと三人で食事に行かないか?会社で打ち合わせだけだとどうもあの人かたっ苦しいっていうか…。他人行儀じゃなくもっと壁を無くして深い話がしたいんだよな。」
佐藤は営業が得意だ。それはうまく相手の懐に入り、気に入られやすいからに他ならない。今回も、生真面目そうな山下の壁を無くし、気持ちのいい仕事をしたいと彼は思っていた。
「食事ですか!?いいですね!私も山下さんをよく知りたいので大賛成です!」
最後ちょっと余計な事を言った気がするが、佐藤は気づいていないようだった。
「よかった。じゃあ山下さんに都合をメールで聞いといてくれないか?彼さえ都合よかったら店予約しておくよ。」
「分かりました♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます