猫心解読機
「皆さん、猫の気持ちが知りたいと思ったことはありませんか?そんな皆さんに朗報です。この度、猫の気持ちを解読して音声で伝えてくれる画期的な機械が発明されました。その適合率は何と脅威の99%!本日は、全国の愛猫家の間で話題沸騰中の”猫心解読機”を発明された猫塚さんにインタビューをさせていただきます。猫塚さん、今日はよろしくお願いします」
「あ、えっと、どうも」
「こちらの”猫心解読機”は、何と適合率が99%という驚くべきものなんですよね。これによって、飼い主さんが猫に引っかかれる割合が20%減少したというデータもあります」
「へぇ、そうなんですか」
「何故そんなに正確に猫の気持ちが分かるんのでしょうか」
「えぇっと…そうですね、昔から猫は好きで。何となく耳を澄ますと猫の声が聞こえてくるような気がしてましたかね」
「それは素晴らしい才能ですね!」
「…ですかね」
「では、実際に”猫心解読機”を使用しながら、猫塚さんに仕組みをご説明いただこうと思います」
「あ、はい。緊張しますけど、頑張ります」
……
帰っていく取材陣を窓から眺めて、猫塚氏はほっと息をついた。
「やっと帰ったな」
部屋の中に少年の声が響いた。
断っておくが猫塚氏ではない。
彼は今年40歳になる、それなりに歳を重ねた男性だ。
そしてこの部屋にいるのは猫塚氏が一人、そして飼い猫の”ナギ”一匹だけ。
猫塚氏は、声の出所である”猫心解読機”と、椅子の上でゆったりと毛繕いをする”ナギ”とを見比べて、深いため息をついた。
「なぁ、俺にはこれ以上無理だよ。もともと口下手だし、頭も良くないんだから。そろそろ皆に本当のことを言おうよ。これを発明したのは俺じゃない…お前なんだ、って」
猫の気持ちが99%分かる”猫心解読機”。
人間の手によるものならば、まさに夢のような発明だろう。
しかし猫自身によるものならば、分かって当然と言えば当然。
むしろ驚くべきは、猫が完璧に人語を理解していることの方であって、こちらこそ間違いなく世紀の大発見なのである。
「駄目駄目。この世は君みたいに良い人間ばかりじゃないんだよ。猫にこんな力があるなんて分かったら、どんな騒ぎになるか分かったもんじゃない」
「あのなぁ、巷じゃ何ちゃら賞も確実とか、もう既に大騒ぎだよ。特許だ何だってのも言われるままにしてるし、俺たちこのまま行ったらとんでもない金持ちになっちまうぞ」
「貰えるものは貰っておけばいいじゃないか」
「俺は何もしてない。じゃ、お前の発明で入ってくる金なんだから、全部お前のために使おう。何が欲しい?」
”ナギ”は興味がなさそうに欠伸を一つすると、その場にゴロンと寝転んだ。
「じゃあ、今より少しだけいい缶詰と、おやつ。それだけで十分。昔から言うでしょ、猫に小判って」
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