友達

よう

友達

僕は24歳。

僕には友達と思っている人がいる。

その友達と出会ったのは、僕が19歳の時だ。

当時の僕は、社交性もないただの学生だった。友達も同じような感じだったので、少しずつプライベートの話なんかをするようになった。

友達はとにかく寡黙だった。何が面白くて日々生き抜いているのかさえも僕に感じさせてくれなかった。


 ある土曜日、僕は友達とLINE電話で、「最近どう?」などといった、たわいもない話をしていた。

そんな会話の中で僕は友達にこう聞いてみた

「ねぇ、社会人になって何か楽しいことあった?」

友達は、30秒ほど黙りこくった後、声を発した。

30秒間の沈黙が起こった時、俺は無視されたのかと思った。

「ないねぇ」

俺は、友達のイメージが自分が思い込んでいるモノと合致してしまったため、何とも言葉に表しにくいタイプの気味の悪さを感じた。

俺は、友達を労わるように言った。

「そうかぁ。なかなか楽しいことなんて、起こることないもんなぁ。」

俺は、答えはわかっているけど、気味の悪さを何とかして払拭したかったので、続けてこう聞いた

「あのさ、何もない日々に満足するタイプなん?それとも、自分が心が躍ったりする場所に積極的に行ったりするタイプなん?」

今度は20秒黙りこくった後、友達は言葉を発した。

「何もない日々に満足するタイプかもしれないね」

なるほどと俺は腑に落ちた。俺とはそもそも価値観が違うんだなと、5年関わってやっと気が付いた。

気が付くと、友達も、僕に愛想を尽かせていたのかもしれないなと考え直すことができたような気がした。


 その日を境に僕たちは話すことが無くなっていった。

結婚した芸能人が離婚するときに、マスコミに対して発する定型文の

「離婚の原因は価値観の違いです」

の意味がなんとなくわかったような気がした。


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