第5話 水の都

 どこかの宿泊施設へ親戚家族と共に遊びに来た私。そこのエントランスには、室内にもかかわらず巨大な噴水が四方を固めていました。

 ざぁぁぁっと涼しげな音を聴きながら噴水の淵に座って室内を眺めると、エレベーターが目に入る。よくよく見てみると、ボックスの上下はワイヤーではなく水の増減で行っているようでした。

 チェックインを済ませた一行は、プルメリアで作られたレイを一人一人首にかけられ部屋へと案内されました。

 着いた部屋も水がふんだんに使用され、部屋の角には小さな滝があしらわれ、窓には添わせるように外側から水が流れています。バスルームを見ると、川のせせらぎと野鳥の声がBGMとして流れていて、洗面の受け皿やバスタブは氷の彫刻のように美しいガラスでできていました。

 一休みした私たちは、非常階段(何故)から下へ降りますが、当然のように非常階段はウォータースライダーになっており、ノンストップで三階から一階へ滑り降りました。

 一階は広い流れる温水プールとなっており、南国に生えているような木や草花が影を作っていました。足が付くかつかないかくらいの深さの流れるプールは、ゆったりと私の身体を運ぶ…。

 浮き輪の窪みにお尻を乗せ、足を投げだしながらふくらみに肘をかけた私。流れの途中で係の人が配っている、ストローが刺さったココナッツを受け取りました。

 中身は甘くてよく冷えており、汗をかいた体にはちょうどいい飲み物でした。


 お金持ちが通う娯楽施設はこんな感じなんだろうなぁ…。

 目覚めた私は、目ヤニの付いた顔を冬の冷水で濯ぎながらぼんやり思いました。

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