ELEVATE~エレベイト~
をぬぬぬぬ
エレベーターに乗れなくても?
ここはエレベーターに乗るのに免許が必要な国日本。
日本では18歳になるまでなんとエレベーターに乗ってはいけないのだ。
このルールができた理由には諸説あるが、青少年の体力向上のためという説が一番有力である。
俺は今年で18歳。大人たちがエレベーターに乗るのを羨ましそうに見るのももうこれで終わりだ。
ついにエレベーターの免許を取る時が来た!
「……不合格です。」
「なんで!」
試験に落ちてしまった……。
「まず、落ち着きがなさすぎます。何回ボタンを押し間違えましたか、あなた?」
「いや、それは、初めてのエレベーターで緊張して……。」
「それだけじゃない。閉ボタンの連打はダメって言ったはず。」
「なんか早く閉まるような気がしたんです。」
「あと、エレベーターに乗ろうとしている人が見えていたのに、気づかないふりしてましたよね?あれ、よくないですよ。」
そんなところまで見られてたか……。
「つい、一人で乗りたいときもあるんですよ……あなたもわかるでしょう?」
「まあ、何はともあれ、残念ですが今回の試験は不合格です。またの機会に。」
「ちょっと待ってください!もう一回、もう一回チャンスをください!」
「おい君、暴れるんじゃない! ほら、早く出て!」
俺のエレベーターライフがあああああああああああああああああ!
「くっそお、免許さえあれば……。」
あの後、何度も試験を受けたが、結果はいつも「不合格」。俺はもうエレベーター免許を取ることを諦めかけていた。
そんな中、俺は子供のころから好きなアニメのイベントに来ていた。
六本木にある高層ビル。そのイベントの会場は10階にある。
普通の大人なら、エレベーターに乗って一分もかからず会場につくのだが俺は免許がないばかりに、階段を上っている。
やっと7階……疲れたあ。ちょっと休もうか。
俺が階段に腰を掛けたその時、
「もしかして、魔法淑女プリティ☆マダムのイベントに来られた方ですか?」
声をかけてきたのはスーツ姿の一人の女性だった。年齢は俺と同じくらい若く見える。
「ああっ。はい。そうですけど……」
なんでわかったんだろう。
「なんでわかったんだろう。」
「その缶バッジ。私もファンなのですぐわかりましたよ。」
声に出てた……。
どうやら俺のリュックについていたヘブンイレブンでゲットした缶バッジに気が付いたらしい。なかなかやるじゃないか。
「それにしても、会場10階なのにエレベーター使わないなんてすごいですね!体鍛えてらっしゃるんですか?」
「いや……その……恥ずかしい話なんですが、免許取れなくて……。」
くっ……。恥ずかしい……エレ免落ちたなんて……恥ずかしすぎる!
「えっ?……エレ免?」
「あっエレ免っていうのはエレベーター免許のことで……」
「ええ、知ってます、知ってます……。えっ?」
引いてるよやっぱり……。
「私もなんですよ!」
ええええええええええ!
「なんか落ち着きがないとかいう理由で注意されて、あと、びっくりしたのがこの前の試験でエレベーターの中でオナラしちゃったんですよ。そしたら注意されて、減点されて、落ちました。合計5回落ちてます。私」
「僕も同じです!6回落ちました!
……まさか、まわりに落ちた人が全然いないので、びっくりです。」
「私もです!よかったあ!私だけじゃないんだあ!」
まあ良くはないが。
「良かったら一緒に10回まで登りましょうよ!私スタッフなんです!そのイベントの!もう一人で上り下りするの辛くて辛くて!」
「は、はい! 行きましょう!」
「エレ免持ってなくて損したことってあります?」
「損ばかりですよ……毎日辛いです。自分だけ階段でひとり……。」
「そうですか……そうですよねえ……。」
「辛くないですか? なんで自分だけって思いません?」
「そうですねえ……。でも、いいこともあるんですよ。」
いいこと?
「この前なんか、マンションのエレベーターが止まっちゃって、そのエレベーターに私の友達もいたんですけど、すごい怖い思いしたって。わたし、エレ免なくよかったってその時ちょっと思っちゃいました。閉じ込められるんですよ? 怖くないですか?」
「だから……エレ免ないおかげで、いいことありましたよ!」
「はあ……。」
ちょっと小さい気もするが、確かに事故には絶対遭わないもんな。
「もしかしたら、今日あるかも! 」
面白い人だ。
「やっと10階だあ!」
「会場こっちです! そこで受付お願いします! じゃあ、今日はありがとうございました! またいつか、イベントで!」
「ええ、こちらこそありがとうございます!」
そう言って受付に入ったその時だった。
「パアン!」
「おめでとうございます! 1000人目の来場者です!」
思いがけない事態に混乱していると、
「記念にオリジナルグッズをプレゼント!」
さっきの女性が記念品を渡しに来てくれた。なんて偶然だ!
女性は俺の耳元で
「ほらね、エレ免持ってなくてよかったでしょ?」
と囁いた。
エレ免を持ってないおかげで素敵な人と出会えた。エレベーターに乗れない生活も、なんだか悪くないかもしれない。
まあ、正直やっぱあったほうがいけどね!
------------------------------------------数時間後--------------------------------------------
「ああ~疲れたあ~。ちょっと休憩するかあ。」
壁に寄りかかって休憩する一人の男。
そんな男に、
「あれ? もしかして、魔法淑女プリティ☆マダムのイベントにお越しの方ですか? その帽子! 限定グッズですよね!」
一人の女が声をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます