第6話 練習試合

「藤原!」

「はい!」


[キュッキュッ]

バッシュの音が響く体育館。

今日は都内の大学を招いての練習試合だ。

俺にとっては久々の試合だ。


試合はレギュラー陣が主体ではあるものの今回は1年生も全員出場するチャンスが与えられている。


そして、今は均衡した状態で第1、第2クォーターが終わり第3クォーターが始まったところだ。

PGをつとめる豊田先輩からのパスを第2クォーター途中から出場の藤原が受ける。

豊田先輩は森下学園ではキャプテンとしてチームを引っ張っていたこともあり後輩の藤原とのコンビネーションも完璧だ。

高校時代に何度か試合で対戦したけど中々に苦労させられた(主に福島がだけど)

実際、大学でも2年生でレギュラーポジションを獲得してるんだからやっぱり凄い人なんだろうな。

そしてボールを受けた藤原はドリブルで切り込むフェイントを掛けつつノールックで左サイドにパスを送る。


「天野!」

「ナイス藤原!」


走りこみながらボールを受けた天野は3ポイントライン外まで下がりシュートを決めた。

こいつも最近は露絡みで色々とぁあったけど中々の曲者だ。

ポジション取りは上手いしシュートの成功率も高いんだよな。


[ポス]

「ナイシュー天野!!」

「「天野く~ん かっこいい~」」

「あ、 あ どうも」


ついでに見た目も結構カッコいいので女子にモテる。

まぁ見た目はチャラいけど根は真面目で女子の応援受けるたびに照れまくっている(何だかそのギャップも良いらしい)

最も、本人は露一筋みたいだけどね。

今も応援してくれた子達に返事をしながらもコート脇で見てる露にそっと手を振ってるし。


な~んて試合を見ていると


「健吾!石森と交代だ!」

「はい!!」


そして第3クォーターも中盤となったところで、ついに俺の出番が来た。

高校時代は俺も藤原も天野もレギュラーメンバーとして活躍していたわけだけど、当然のことながらここではまだ新入部員。

技術的にも体力的にもまだまだ先輩達には敵わない。

今日の練習試合でも俺達1年生はベンチスタートだった。


「頼むぜ田辺!」

「おぅお疲れ石森」


倉北では天野と並んで点取り屋として活躍していた石森。

今日も得点に絡む活躍もしているし俺とはポジションも同じだ。

負けられないよな。


コートに入ると早速俺達のチャンスがきた。

相手ゴール下で部長の本橋さんがリバウンドをゲットしボールを豊田先輩にパス。攻撃の形が出来上がった。

藤原が豊田先輩のフォローに走り俺と天野がゴールへとポジションをとる。


当然俺や天野にもマークは付いたけど、上手くマーカーを外したところで藤原を経由してパスを受けることが出来た。

そして、ゴール下の相手ディフェンスを避ける様にフックシュート気味にしシュートを決めた。


「健吾く~ん ナイスシュー!!」


今日の練習試合は男子のみということで楓や露は応援に回ってくれてるんだけど楓の前で少しは良いところ見せられたかな。


その後、藤原や天野も交代し1年生が全員試合に出たところで第3クォーターも終了。第4クォーターはレギュラー陣が締めるということで俺の出番も終わった。

最初のシュート以降は中々シュートチャンスも無くあまり得点に絡む活躍は出来なかったのは正直悔しかったな。



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「シュート決まってよかったね」

「う~ん。でも1ゴールだけだったからなぁ」

「・・・それを言ったら私なんかノーゴールだよ」

「ゴメン。。。」


前日に行われた女子の練習試合には楓と露も試合に出場した。

しかし、上手くペースをつかめずにシュートは放ったものの楓も露もノーゴール。

夏川さんも得点に絡むプレイは出来たもののシュートは決められなかった。


「やつぱり高校のバスケとは違うね。みんなレベル高いよ」

「だな。高校時代エース級だった選手も集まってるんだもんな。

 でもさ、それはそれで何だか燃えないか?レギュラーに入りたいし」

「うん。私も結構負けず嫌いだからね♪」


だよな。楓はそうでなくっちゃ。

まぁ俺も負けず嫌いってところは人の事は言えないけどな。


「あ~もう また2人の世界作っちゃって!今日は私も居るんだからね!」

「あれ?今日は天野と一緒じゃないんだ」

「せ 聖矢君は今日はバイトがあるからって・・・」

「はは 悪い悪い♪」


いつの間にか天野の事名前で呼んでるんだ。

っていうかいつの間に?

友達からとかこの間言ってなかったか?


「天野君ってバイトしてるんだ」

「うん。駅前のカラオケ店でバイトしてるよ。この間一緒に行ったんだけど歌凄く上手いんだ♪」

「「へぇ~」」


2人でって・・・デートじゃんそれ。


「あ、割引券貰ったから今度一緒に行こうね」

「そうだね。健吾君とも最近カラオケとか行ってなかったもんね」

「そうだな。今度行こうか」

「あ、それなら藤原君達も誘ってみようよ。由紀ちゃんも夏川さんも歌上手いし」

「そうなのか?」


藤原とは何度か行ったことあるけど森田さんと夏川さんとはカラオケは行ったことないな。

楓は・・・そっか森田さん達とバイトのシフト同じだったんだよな。

でも、バイトかぁ~俺もそろそろ何か始めようかな。

この間バッシュ買っちゃったしそろそろ貯金も怪しいんだよな。

楓と遊びに行くにしてもお金はかかるし。

授業が落ち着いてきたらとか考えてたけどどうしようかなぁ~





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