私は生きるためなら皇帝にだってなってみせる

響鬼 霊子

第0話 エピローグ ー 無能皇后 ー

私は今日も皇帝陛下陛下に気に入られるために美しく化粧をし、姿勢を整える

今日は来ることが分かっている

何故かと言うと私の25歳の誕生日だから



私は陛下に嫌われている。特段、悪いことをした訳でもないのに嫌われている

多分、それは私が邪魔でしょうがないからだろう

私は利益のない皇后だ。居なくても別に構わない存在……。だからこそ忘れられている。それに彼には幼馴染で愛人であるリリアがいる。陛下はその女を溺愛して止まない。幼い時から……



そう。私は言わいる小説で言う悪役といった感じだろう。皇帝とヒロインの恋を妨げる役割だ

それでもこの時の私は悪役なんて思ってはいなかった。私はいつか愛されるんだと信じていた


そんなことは一生来ないのに……




アイリス・ローズマリアアイ・ハイドレンジャーリス様。陛下がお見えになさっていらっしゃいます」

「そう。ありがとう。カーミラ」

私はカーミラが来たことで、ドキドキ、オドオドさせながら陛下を待つ

すると大きな扉が開き、銀髪でサファイヤブルー色の瞳を持つ高身長な男の人が入ってきた

そう、この人が私の夫。レオンハルト14世。吟遊詩人のように艶かしげな美人だ



「久しぶりだな。皇后」

相変わらずこの目は冷たい。だが、雰囲気は明るめだ。いつもの憎悪が含んでいる雰囲気がしない


何かいい事があった??


「あっ……。申し訳ありません」


アイリスは青薔薇柄が描かれた扇子を落とし、拾う

その間の彼の笑顔がいつもより凶悪なだったことをアイリスは知らない


「はい。陛下」

「そうそう。お前に誕生日プレゼントがあるんだ」

「プレゼントですか?」



陛下は後ろを見て、何かの合図を出した

すると30人あまりの軍人が突然、現れ出した

そしてその全員が私の方へ剣を向けている


私は訳が分からず、しばらく体を硬直させた

やっとしばらく経って私の思考が戻ってきた。そりゃぁ、真っ白になる。だってなんも悪いことしていないのにこんな多人数で剣を向けられるんだもの

まるで私が悪者みたいじゃない……

とりあえず聞かなくては。きっとサプライズだわ…


「これは、どういう事ですか?陛下?」

私な陛下に答えを仰いだ


「どういう事って?それはお前へのプレゼントだよ」


こんなっ……。笑顔を見たことは無い。狂気に満ちた笑顔を……

私は訳が分からず、数歩後ろへ下がる

こんなのはおかしい。だって私は彼らにとって無害だったはず……

めんどくさい公な公務をこなすただの皇后にしかなかったのに……。どうして……?


「……私が、私が!!何をしたって仰るおつもりなのですか!?」



すると陛下の愛人 リリアがアイリスの目の前に

現れた。リリアは皇帝の腕を組んで私を嘲笑って見ている

私はびっくりして、2度もあの女を見てしまった

その格好は皇后のみが着れる衣装だ

皇后しか着てはならない服。皇后の証であるティアラ……

毅然としたその姿は自分が醜く見える


どうして、あの女があの服を着ているの?

おかしいわ。この皇宮にいるメイドなら絶対知っている事だし、なんなら着たら処罰を食らうものよ


リリアはそんなことを気にした風もなく、私に近寄り至近距離で私の顔をジロジロ見る


「何をしたかって?謀反を企てた罪よ」


「私はそんなことしていない!!」

私は思っいきり叫んだ。みんなは軽蔑するような目で私を見ている


どうして?私はみんなに尊敬される皇后であったはずよ?なぜ、どうして?カーミラまで……

こんなの嘘だ!悪夢の中にいるんだ!!

私は自分の顔を叩く。そして痛みを感じた

これは現実だと知った。私は多分、顔を青ざめているだろう



私は未だに現実を理解出来ていない


でも、嘘だ。サプライズですよね?陛下?

「……陛下。陛下なら分かりますよね!?」


そして彼に縋り付き、顔を見た。その瞳は嘲笑っていた。そして首元を捕まれ、投げ飛ばされる

私は床に伏せた体を起こした



私はそこでやっと。『あぁ。現実なんだ』と理解した。そして絶望や悲壮感で今まで彼の前で流したことない涙を流した



その悲壮感に浸る私を彼はさらに追い打ちをかけた


「俺に何を期待しているんだ?皇后?お前はもうこの国には必要ないんだよ」


彼はそう言いながら服に付いた埃を弾じくように私が触ったところを弾いた。そして軽蔑な眼差しを向けた


「どうしてですか……?どうして!?私はあなた方の邪魔もしなかった!皇位継承権も棄てた!なのに……なぜこのような仕打ちを受けなくては行けないのですか!?!」




冷たく低い声が部屋の中を響かせる

1人の男が私の元へ近付いてくる

私はへっぴり腰を引きずりながら後ろへ下がる


「無能な皇后はこの国には必要ない」

この低い声はお兄様??どうしてあの人がここに?戦争に言っていたはずじゃぁ……

「……お兄様?」

私の異父兄であるグラードが憎しみに満ちた赤い瞳で私を見ていた。彼はものすごい殺気を私に向かって放っている


私は目の前に立つ、その人をただ涙目でただ、見るだけだった


「お前たちがしたことを俺は忘れてない。父上は俺を何度も殺そうしていた。母上は嫌な事があると虐待をする。お前はそれを無視し続けた」


するとお兄様は私の髪を乱暴に掴み、引っ張りアイリスの顔を憎しみに満ちた瞳で見る

とてつもない殺気を出している


「俺はお前たちを許さない」


そう言って私を床に倒し、ブーツで私の頭を踏んだ

更には腹蹴りに髪の毛を無雑作に切られた


私にはただされるがまま。ただ涙しか出なかった






しばらく経って、私の処刑が執り行われる日になった

私はただ、下を向く。現実から逃避したいがために


あぁ。私、死ぬんだ。一生懸命、皇后としてあの人の妻として支えたのにあの人の手で殺されるんだ……

そういえばあの人に好きだと言われたことがなかったなぁ。……なんであんな男が好きだったんだろう?あの男は私の愛を仇でしか返されたことがなかったのに





小さな優しさに心が動いたから?

そんなわけない。あの男は幼い時から冷たかった


なぜ、盲目になった?他の恋をなぜ捨てた?

まだ他の恋の可能性はあったはずよ


なぜ、あの男のために皇位継承権を捨てる必要があったの?私は皇位継承権2位なのよ?



今の私には後悔しかない

戻りたくとも戻れない

もしもやり直しができるなら私は何としても生きて幸せになってみせる!あの男になんか殺されたりなんかしない!


あの男にほんの少しだけでも『報復』を……



私は処刑台の上に立つ。それを見つめるあの男の視線は冷ややかだった

私は正面を向いて、笑った見せた

女王らしく。気品高く。私こそが


それを見たあの男は驚いているのだろう。身体を膠着させているのがここからでも分かる



『これでやっとご満足ですか?陛下?』





青のアイリスは美しく散った

彼女はもう青薔薇ではない、彼女は青紫陽花だ



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