第3章 14 激しい言い合い
エントランスの扉を開けて屋敷内へ入ると、広々としたホールに聞いたことの無い声の怒声が響き渡っていた。この屋敷は3階建てでエントランスホールは天井まで吹き抜けになっているので、その怒声の響き渡る事と言ったら半端ではない。
「だから、この私を誰だと思っておるのだ!ロザリア令嬢の婚約者の父親だぞっ?!早くギンテル伯爵をここへ呼んで参れっ!」
まるで拡声器を使ったかのようにガンガン響き渡る声・・これが日本の住宅街であれば間違いなく通報されるレベルである。
それにしても・・はは~ん・・・ここから様子はうかがえないが・・・多分一番手前の客室に通されているんだな・・?そして肝心の父は姿を現していないと・・・。
なら、いいでしょう!この私が自ら相手になってやろうじゃないのっ!
中央階段の左の廊下を曲がるとすぐに、やはり扉が開閉されている部屋があった。ヒョイと覗き込むと、こちらに背を向けて、立っている男性とソファに座っているのは・・あれはジョバンニだな?この2人が我が屋敷の初老の筆頭執事に向かって怒鳴っている。しかし、さすがはギンテル家の筆頭執事。顔色一つ変えずにジョバンニの父親の咆哮をかわしている。
「ですから突然アポイントも無しにいらっしゃられても、ギンテル伯爵はとてもお忙しい方なのです。1週間先の予定迄埋まっているのですからあらかじめお会いになりたければアポイントを取られてからお越しください。大体ギンテル伯爵はあなた方、コナー家よりも爵位が上なのですよ?あなた方は子爵家なのですよ?その点はお分りなのですか?もっと身の程をわきまえるべきですね。」
おおっ!さすが筆頭執事!ものすごいことをサラリと言ってのけているっ!
「な、な、何だとぉ~っ!た、たかが執事の分際でっ!」
ジョバンニの父は頭から湯気が出そうなほど激怒しているし、ジョバンニはそれをただ傍観しているのみだった。
「貴様っ!もう我慢出来んっ!」
おおぅっ!つ、ついにジョバンにの父が筆頭執事に手を上げた!
「待ちなさいっ!」
私は大声で叫ぶと、ジョバンニ親子がギョッとした顔でこちらを振り向いた。
「・・・誰だ?」
ジョバンニ父・・ええい、めんどくさい!コナー子爵は私を見てキョトンとしている。そうか。痩せて美少女になったロザリアが分からないのか。すると今まで黙っていたジョバンニが素早く言った。
「父上、あれがロザリアですよ。」
ちょっとっ!今私の事をあれ呼ばわりしたな?!
「何と驚いた・・・あれが本当にロザリアなのか?」
ま、まただ・・・親子そろって人の事をあれ呼ばわりしている。
「ええ、そうよ!私がロザリアよっ!コナー子爵!一体何をしにこちらへいらしたのですかっ?!」
大股でズカズカと彼らに近付きながら私は言った。
「何をしたかだって、お前文句を言いに来たに決まっているじゃないか!」
ジョバンニは立ち上がると私をビシイッと指さしてきた。
「ふ~ん・・・・ジョバンニ。着替えてきたのね。どうだった?池で泳いだ気分は?気持ちよかった?」
ジョバンニは青い上下のスーツにネクタイに赤いタイを結んでいる。
「な、な、何だって・・・!気持ちいいわけないだろう?!池に落ちた時、ちょびっとだけ水を飲み込んでしまったんだからなっ!」
ジョバンニが喚く。
「ちょびっとだけなら死なないわよっ!大体お魚も泳いでいたんだから水はきれいなはずよっ!本当にきったない水ならねぇ・・魚も住めないんだからっ!」
全く・・大げさな奴だ。
「何だってぇ~っ!」
怒りで顔を真っ赤にするジョバンニに父親も加勢する。
「おのれ・・・この小娘めっ!よくも我が息子を池に突き落としたな?!」
「はぁ?!誰が突き落としたですって!ジョバンニが勝手に落ちたのよっ!全く・・・あんなことくらいで池に落ちるなんて運動神経悪すぎでしょう?!」
私も負けじと言い返す。
「いいですぞっ!お嬢様っ!もっと言っておやりなさいっ!」
筆頭執事が応援する。その時―
「そこまでだ。」
客室に声が響き渡った―。
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