#6 異世界の定番で冒険者ギルドに入らないと駄目だよね


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「『千人兵』っていうのは、各ギルド共通のランクだ。『一人兵』『十人兵』『百人兵』『千人兵』『万人兵』『億人兵』ってランク付けされてな。想像に難しくないと思うが奴は相当な上位なのさ。」


そう言って奴の立ち位置を始め。大雑把ながらギルドシステムを話してくれた。

大体は都会もんの殆どは幼年でそれとなく理解し、レイグローリーの学徒でなくても中等で大体登録を済ませる背景があった。

ばっさり言えば、俺は高等学科から入ったイレギュラーって訳だ。

誰も悪くないんだよな・・・・行き場の無い何かがあったが、マルスさんは話を進める。


「実態としては身分証代わり、一般市民も『冒険者ギルド』に入るもんだよ・・・。職の有無にかかわらずにな。」

「戦闘技術が無くても?」

「ああ・・・本来の目的は市民の管理が優先でね・・・一般人からは身分証の手形発行所みたいなもんさ。・・・っていうか・・今・・気づいたんだが。此処まで来るまでの旅の資金繰りは如何してきたんだ・・?」


それまでの事・・・そういえば・・・彼からすれば、俺が今までどうやって身分証明して来たか疑問になるのも当然である。まぁそこは素直に話す。


「・・・ドーニンドー商会の紋様を身分証に・・・」

「はぁあああ??」


その一言で、マルスさんは叫び声に驚き、思わず身を仰け反った。どっちが驚いているのかわからない程に。


「ドーニンドー商会と知り合いってだったのか・・・。」

「本当ですよ・・・ただ、ここについてから。その紋様は本人に返却しましたから・・・で・・そのまま今はルイーン邸に居候で・・・」


そんな事を話すと、マルスは考え込んで額に指をあてる。おおよそ・・・あの豪邸を知っているからそう言う反応にもなるのだろうが。

「まったく・・・君って奴は・・・ことごとく想像の域を超えるなぁ・・・」


そんなやり取りの中で取調室の扉から慌てふためいたノック音と共に扉が開く。

開けた扉から見えた。その男は一言で表せば、ライオンを人間にした様な剛毅な獣人と言う滅茶苦茶わかりやすい風体だった。

ヴィラとよく似た、ギラついた目に。茫々と生えたたてがみに骨格は人間のそれとは常軌を逸した筋骨隆々さが際立っている。軍服と言う格好はマルスさんと、酷似しながらも上役である特徴の紋章を襟首から覗く。

酷く重たい声で一言。


「マルス・マリガン君、彼を取り調べは此処までにしたまえ・・・」


どうやらこの小部屋での聴取は打ち切りの様だ。マルスさんも同意の言葉、獣人の偉い様は、追い打ちをかける様に答える。


「・・・もちろんですとも・・・これ以上彼をこの部屋に入れる理由はないでしょうなぁ・・・。我々の首が飛びかねない・・」

「上階の会議室を空けた・・身元引受人も何人も現れているし・・・彼をそっちに・・」


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騎兵局っていうのは、石造りのご立派な6階建て+地下2階を設けた建造物、目的となる5階は大体的な会議室が設けられており。

1階のメインフロアには戦場と化している各種受付。そして、地下1階と2階には主に隔離された聴取室、独房区と物騒な設備設けている。逆に上階である2、3階は各部署の事務室をメインとし、4階はほとんど資料室。もちろん6階は偉い様の部屋というわけ。


特に5階は1~4階の様とは違い、別格な程に清潔感ある廊下だった。赤絨毯を敷き、白い壁に重厚な扉が均一に並んでいた。地下1階の取調室は石造り剥き出しの壁と灯りだけだったから、なおさら雰囲気がコントラストが凄すぎる。


騎兵局長の獣人さんを先頭にし、後ろにマリス・ガルガンさん。その二人についていく俺。

後ろに付き添いの兵が二人。パッと見て年齢は二十過ぎの年上で、物々しい鎧を装備していた。天井を見回し俺はマルスさんに疑念を促す。


「っていうか・・・ちょっと豪華すぎない・・・?」

「なぁに・・・直ぐにわかる・・」


後ろで俺とマリスさんとやり取りを、騎兵局長は警告と言う形で一回咳払い。それに続いて慰めの言葉を掛けられる。


「まぁ、君も災難だった・・・としか言えない・・・こっちもこっちで、とばっちりだがねぇ・・・」


自分にも、マルスさんにも当てはまる様な言質をし、騎兵局長さんはある扉の前に立ち止まって扉を開ける。

その部屋にぞろぞろ入っていく。俺を最後に踏み入れると、殿の二人に向けて局長が「誰も居れるな!!」と命令。番の役を命ぜられた兵は「ハッ!」と返事する。

それとは入れ替わる様に室内の声が響いた。


「レージ様!!」

「レージさん!!」

「レージ殿・・相変わらずトラブルを・・・」


「はうあー、無事でよかっただス・・・」

「いやぁ・・・警備兵のキッツイ取り調べには・・・あはは・・・まぁギルド証のお陰だったけど・・・まさか君はギルド未加入だったなんて・・・」


先にハルーラはこの部屋に入って来れた様だ。

声の主であるネイア姫、ミスティア、ヴィラの3人。彼女らはダルダが事の事態を知って皆に伝えたという。

どうやら、俺の手続きには色々と錯綜した。ライオン頭の騎兵局長が仕切り直しの咳払いする。同じ獣人のヴィラがそれに反応し頭を下げる。


「ガレオン局長殿・・・此度は私共の知り合いにご迷惑を・・・」

「まぁ・・・なんだねぇ・・・こういう状況は非情に稀だ。なんせ、ギルド証未所持・・・個人情報としては、討伐数大型魔獣49体の記録を保持。その記録は3か月前の弩後牛の一件を通して、マリス君が知っていなければ。我々騎兵局がドーニンドー商会から叱責を受ける所だよ」


肩をすくめて騎兵局長が肝を冷やしている。

『ドーニンドー商会』と『討伐数大型魔獣49体』というワードに驚く一同。

マリスさんが説明を引き継く。


「聞いての通りだ討伐褒賞金が未だ授与されていない!総合ギルドでも、騎兵局でも、騒然としている。在籍は解っていたんだが・・あの後は色々手が回らなくてな・・・。」


受験の当日では例の魔族の存在。アマチでは未知の魔獣。イレギュラーな事態で手が回らない事態は先刻承知だ。だが、突飛な言葉である『褒賞』っていうワードには少々混乱した。


「えぇっと・・褒賞って・・・」

「魔獣を倒す事で得られる、褒賞金さ。元々魔獣に対しては不確定だい、実際はガイドラインに沿ってギルドや商会に依頼を通すのが常。だが、突発的有事に対して事後報告で役場や支部ギルドに通報する事が義務としている。覚え位はあるだろう?」


突飛なハスキーボイスに俺は驚く。ジード皇太子殿下が更に奥の席で座っていた、付き人の男女の二人そして・・・。長身長髪の超美形の男が立っていた。


「田吾作・・・うちの領土の問題に首を突っ込んでいたとはな・・・。」

「ジーク殿下殿に・・・カリス・オーディーン・・・領土?」


この事件にはカリスと関わっていた事を、その理由は俺は知らない。


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ジード殿下が簡潔に述べてくれた。


「領土問題っていうのはね・・・カリス・オーディーンの生まれ故郷『オーディーン領』でね・・・世間を騒がせている不当な魔銀石の供給元・・・まだ予測の範疇だが」

「断定はできないが・・・魔銀石の採掘元が『オーディーン領』内で行われていたって事か?」

「今現在もおこなわれている・・・元はハンスが指示でね・・・上申して来たのは商業ギルドと製鉄ギルド並びに各鍛冶屋系のギルドから・・・で調べている最中だった・・・。」


俺の言葉に、カリスは不甲斐なく答えた。どうやら彼らは裏取りの真っ最中だったようで、俺が絡むとは思わなかった様子だ。

ははーん・・・指示する人間が居なくなり。制御の利かなくなった『ゲスノズ商会』の連中は勝手に動き出したわけか・・・。腐ってもハンスは副騎兵局長って言う肩書だ、悪知恵は良く働く分・・元はバカではない・・・。

忌々しくカリスが口を開いた。


「元々うちの領地は、数世代経った今でも開墾の真っ盛り。下手に土地開拓したら土砂崩れが勃発する、曰くある土地でね・・・。一族のご先祖様が代々土地を調べ。地質学者としての家系を持つようになった訳だ・・・。」

「え?じゃ君は何でレイグローリ同盟学園に?」


「俺は実家じゃぁ、味噌っかすの貧乏貴族の三男坊って所さ・・・で・・天恵かね、こいつが抜けれる・・・代々伝わる一族の家宝のこの『魔剣』をね・・・それに騎士になれば稼ぎも良くなるし。家に送るお金も増える・・・まぁお互い万々歳って所だよ。」


俺の疑問の即答。カリスは背中の獲物を目配せ、それは身の丈以上もある彼のトレードマークだ。


「さて、こうして集まったんだ・・・まぁお互い思う所があるが一つ一つ、解決しようではないか・・」


ガレオン騎兵局長が取り仕切った。

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