第16話間違えたプレゼント
王子が帰った数日後に国王陛下からこっそりと謝罪の手紙が来てウェディングドレスの発注を王子にバレないようこっそり止めて今は王子に合う見合い相手を早急に探しているそうだ。
なんかまた揉めそうな気配がするけど。
僕は陛下から頂いたありがたい禿げの治る薬の小瓶をドキドキしながら開けてペタペタと後頭部の円形禿げ3つに塗りたくった。
ストレスか病気かもう判らないがとっくに諦めてはいるが。王家の薬と聞くとな。陛下はセシリアさんとイチャイチャすればとも言っていたけどむ、無理だよ。
セシリアさんの前に出ると以前よりは慣れたけどやはり美しい人を前にすると照れてしまう。容姿はもちろん本当に心まで美しい人なのだ。他の男達や王子に思われて当然。
僕はセシリアさんが好きだけどセシリアさんが本当に好きになった人がいるなら応援すべきだと思う。だが、セシリアさんが嫌がる王子とは仲良くなって欲しくないなぁ…とも思う。
ともかくボフリとベッドに一人寝転がった。
「早く眠らないと…」
と目を閉じるとセシリアさんの笑顔が浮かぶ。夢の中ならセシリアさんに好きになってもらえるだろうか?
ふいにふわふわな雲みたいな所でセシリアさんが手招きして僕を呼ぶ。僕の頭はなんと髪が生えていて…。セシリアさんは笑顔で頭を撫でてくれるのだ。心地よいな…。
と思っていると朝が来て目覚める。後頭部はやはり禿げたまま。まぁ、1日で薬が効くはずもないか。
部屋を出て朝食に向かう途中でセシリアさんとアグネスさんに出会した。
今日も朝の光を浴びキラキラしている。しかし少し寒そうに身を竦め
「ローレンス様おはようございますっ!今朝は少し冷えますわね?」
と言う。そしてかけよりいつものように僕の頰にチュッと挨拶のキスをした。
途端に恥ずかしくなりつつも僕も返した。
挨拶だから普通のことなのだ。
*
冬前に領地の視察に行って領民に挨拶したり禿げを子供らに笑われたけど僕はもう気にせず逆に禿げにインクで顔を書いたりして笑わせたらきゃっきゃっと子供は笑い、両親に謝られながらもお礼を言われた。
領民達から数点毛糸や暖かい毛皮などを貰ったので冷え性のセシリアさんに領民達からと言って渡すと喜んでくれた。
「折角だからこの毛糸で帽子を編んであげますわ!私も腹巻を作ろうかと思いましたの。マフラーや手袋なんかもいいですわね!」
と沢山の毛糸を見て笑う。
セシリアさんの手作りの帽子なんて!楽しみだし一生大切にしよう!!
まだ貰ってないけどそう思う。
でも…貰ってばかりじゃなんだか悪い。僕も何かセシリアさんにプレゼントをした方がいいのかな?
思えば結婚したとは言え彼女に何も贈っていないのではないか!?ドレスなんかは贈ったけどあれは夜会に出る為のものだ。何かもっとアクセサリーとかだろうか?
でも女性にアクセサリーなんて贈ったことがなくセンスが悪いものを贈ったら最悪だ。
ど、どうしよう…。誰かに聞いてみようかなか?
とりあえず男の使用人達に声をかけて見ることにした。
まず執事のディーン爺さんに聞いてみた。
「坊ちゃん…いや旦那様…奥様へのプレゼントですか…やはり花束でしょうかな?」
「ううん…でもディーン。花はすぐ枯れるよ…」
「私は若い頃妻に花束を渡したら大喜びでしたよ」
何か時代が違う気する。
次にジョルジュの所に行ってみた。
「プレゼント?そうですね…やはり…高価なアクセサリーでしょうか?身につける物だと女性は嬉しいのでは?」
と言う。うーん?やっぱりそうなのかな?
「身につけると言えばスケスケのネグリジェとかも…」
「それは君が喜ぶだけだろ」
と白けた。
次にニールの所に行ってみると
「短剣でしょうか…万が一何かあった時女性には身を守る術がありませんしいざと言う時はじが…」
「危ないから却下だよ!」
と慌てる。セシリアさんなら勇敢に戦いそうだけど!?
料理長は女の子ならスィーツと言う。甘いものと言っても色々あるしもし太らせたら怒らせる。どうしようと悩みつついつの間にかセシリアさんの部屋の前でうろうろしていて慌てた!
するとガチャリと扉が開きアグネスさんが
「旦那様?何か御用ですか?」
「えっ!?あ、あのう…べ、別に…」
「そんなことはないでしょう?ほらどうぞ!」
と招き入れられてしまう。
「ローレンス様?どうかしまして?とりあえずお座りになられたら?」
とソファーに座らせられる。
「実は…セシリアさんのプレゼントを考えていたのですが中々良いものが浮かばなくて…」
「まぁ!そんなことを気にされていたのですか?別に何もいりませんわよ?」
ああ!なんて欲のない人だろうか!
「でも…僕女性にプレゼントなどしたことが無いし…セシリアさんに喜んで欲しくて」
と言うとギュッと手を握られ真っ赤になる。
「ローレンス様ありがとうございます。でも私この家にいることが幸せなので。いいのですよ?」
「で、でも…」
と眉毛を下げると
「では一緒に庭を整備しましょうか。まだ新しい庭師を雇っていないのです。ついでに温室を綺麗にしましょう」
「まぁ!奥様!そんなの使用人にさせればいいのに」
とアグネスさんは言うとセシリアさんは笑い
「大丈夫よ。これが私なの!」
「判りました…。重い物は僕が持ちます!」
と明日から作業することになりまた使用人達も手伝うと言いあたふたした。
*
温室には野菜も少し植えることにして僕はクワを振り上げた。結構重いものだ。頑張って休憩すると血豆が出来ていてセシリアさんは手当てしてくれた。彼女は種を植え水を撒いた。土だらけになる伯爵と夫人を見て使用人達も微笑ましくなる。
疲れて眠りまた温室で働いたりしてその繰り返しである朝…枕元にプレゼントの包みがあった!手紙が付いており、
(ローレンス様帽子が完成しましたから受け取ってください。
セシリアより)
と書かれておりドキドキしながら開けてみる。
すると……
ん?
あれ?
「これは…」
広げてみるとなんか帽子と違う。あれ?なんか毛糸のパンツに見えるけど気のせいだろうか??
ええと…僕が履くにしても小さいし…。
……ええと…
と思っていると凄いバタバタと音がして
「ローレンス様!!まだ開けてないですかっ!?ごめんなさい!間違えてっ!!それは!!ってきゃあああ!!」
と慌てて真っ赤になるセシリアさん。どうやら帽子と自分の毛糸のパンツを間違えて入れてしまったようだ。
パンツを奪い素早く帽子を渡した。真っ赤になりながら
「こちらですわ!!ほ、本当にごめんなさい!」
と謝る。
思わず可愛いセシリアさんにキュンときた。
「こちらこそ帽子をありがとうございました!」
と急いで帽子を被ったらなんかこれもちょっと小さい。
しかし頑張って被り何とか頭にすっぽり嵌る。
「ごめんなさい!サイズがどうやら合っていませんでしたわ!ちゃんと測るべきでしたわ!」
「気にしないでください!!」
と僕は言うけど
「ちゃんと合っている帽子でないといけませんわ!」
とのこだわりが発動しセシリアさんは
「失礼!」
と言い僕の頭を抱えてしまい、顔の横にむむむ胸が!!ひいいい!
と赤くなっているとセシリアさんは先ほどの帽子を解いて僕の頭に巻き付けて測りだした。
「これで大丈夫ですわ!…あら?ローレンス様?どうなさいましたの??あらあら?」
茹で蛸になる僕を揺する。
アグネスさんが面白そうに後ろでクスクス笑っていた。
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