第10話 あらぬ誤解と濡れ衣
とうとう元婚約者であるエルトン・マイルズ・ホースウッド王子とエステル・ギャブリエラ・ステップニー男爵令嬢が大広間に現れた。
王子は私を睨みつけているようだ。
何なのそっちから招待しておきながら。
ああ、まさか落石で死なずにこの場にいるからかしら?
しぶとくてごめんなさいね!
国王陛下の挨拶が終わりエルトン王子は結婚発表の為エステル嬢を伴い挨拶を始めた。
「この度は俺とステップニー男爵令嬢の結婚発表の場にお集まりいただき感謝する!エステルは未来の王妃となる。……しかし…悲しい知らせがある!」
と王子は言葉を溜めて涙ぐむように顔を手で覆って震えている。
何なんだ?嘘泣き?
「大変めでたいこの場だが言わなくてはならない…」
いや、さっさと言ってくれ。
「実は…エステルの子が数週間前…流産してしまったのだ!」
と驚くべきことを言った王子!
流石の私も驚いた。
「数週間前のこと…。誰かが…エステルの皿に毒を盛り…エステルは助かったがお腹の子は…ああっ…」
とくず折れる王子。えっ!?本当に?毒を盛られたにしては横の女ピンピンしてない?肌艶もいいぞ?もっと憔悴していてもおかしくない。
国王陛下と王妃様は今聞いたのかびっくりして青ざめていた!!
「何だと!?それは本当か!?エルトン!!」
と駆け寄る。
「父上…本当です。あまりにも辛く…父上達に今まで言えなかったのです!」
「して…その毒を盛った犯人は何処へおる!?」
すると王子は一瞬私を見てニヤリと笑いパチンと指を鳴らした。
すると扉から兵士に縛られて連れてこられた男…そいつは…庭師だったウォルトだ!!
「この男です…。父上。男を調べて吐かせると…首謀者はあの愚かな元婚約者だった女セシリア・ミキャエラ・チェスタートン侯爵令嬢…おっと間違えたもうファーニヴァル伯爵夫人だった!」
と言われる!何だとお!?
大嘘だ!
驚くべきことにまたもや私を断罪しにかかっている!まさかの2回目!!
何なんだこいつは!!
「その男はファーニヴァル夫人の手駒です。愛人と言った方がいいだろうか?そして俺のことが忘れられず禿げた伯爵に嫁がせたことを怒りその矛先をエステルに向けたのです!彼女共々殺そうとした!お腹の子を殺した罪は重い!
どうか父上!セシリアを死刑に!!」
と高らかに勝ち誇った顔で言う。
は?
な、何で?私がこんなことになって?
気分が悪くなった。一斉に皆私を悪者に仕立て上げる。前もあったけど、前は嫌がらせ程度だった。でも今回は違う。お腹の子が死んでいるのだ。
そもそも本当にお腹の子が居たのかも不明だけど。わざとらしくエステルは泣き叫び
「セシリア様!!私が男爵令嬢だからって酷いですわ!子供を返してくださいまし!!」
と喚き出した。おい、知らんぞ。
それにそんな元気に叫べるのか!?
どうしようグラグラしてきた。
そこへ
「お待ちください!!しょ、証拠は!?証拠はあるのですか!?それにそ、その庭師の男ウォルトくんはこの前クビにしていますし、つ、妻は…浮気など絶対にしません!!」
とローレンス様が頑張って声を振り上げた。プルプルしている。
エルトン王子は
「そちらこそ浮気をしてないとの証拠はあるのか?この赤毛男を尋問したらセシリアとの浮気を認めたぞ!」
「う、嘘です!王子は嘘をついておられます!セシリアさんは…妻のセシリアはいつも優しく私に接してくれたし伯爵夫人なのに文句言わずに屋敷の使用人達と一緒に掃除をするし、いつも侍女と仲良く話していたりで、誰かと浮気をしている暇などありません!」
「ローレンス様…そ、そうですわ!!私…伯爵家に来てから真面目にやっています!そんな…王子と婚約破棄されたことなど逆恨みに思うはずありませんし、今日だってこうしてお祝いに駆けつけましたのよ!?」
「では侍女を連れて参れ!」
え!?
「あ…あの…」
とローレンス様が言う。
「侍女のリネットは来る途中落石事故に巻き込まれてここに来れなくなり…」
「ほら見たことか!!証明もできぬようだな!父上!賢明なご判断を!子をこの女に殺されたのですからな!」
エルトン王子はもはや私に可笑しくて仕方がないと言う顔をしていた。
こっ…この野郎ー!!
死罪…殺される…のかしら?
「違います!妻は!セシリアは浮気をしておりません!!王子!失礼ながらそのお子の墓を見せていただきたい!墓を掘り起こしきちんと赤子の亡骸を見せてください!!」
とローレンス様が叫んだ。それに王子は顔を歪める。
「ちっ…このハゲが…」
と呟きエステル様は
「何という酷いことを!!私の子の墓を暴くと!?国王陛下!このハゲ…非人道的な伯爵も同罪ですわ!!」
とギャアギャア喚く。
でも私もローレンス様の言う通り墓に何も入っていないのではないか?頭の悪そうなエステル嬢は主治医に金をやり子が出来たと嘘の発言をさせたのではないのだろうか?
落石事故にしたって何故私をこんな執拗に狙うのだろうか?
広間はもはやザワザワと騒然になった。
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