未来の愛

瀬田 乃安

第1話 出会いは突然に

 売れない小説家 田乃瀬アン(50歳)は、今日も小説のネタを必死で探していた。30歳で、何の確証もなく、単なる思いつきで脱サラして20年。およそ20作品を書いてきたが、未だかつて出版には至っていない。


 生活は、警備員のバイトで成り立ってはいるが、もちろん、妻も子もおらず孤独死まっしぐらの道を歩んでいる。それでも、その思いつきにすがって日夜ヒット作を夢見ている。


 バイトから帰るなり、いつものようにパソコンの前に立ち、スイッチを入れる。そしてニュースサイトから時代の流れを探りながら新しい企画を考えていた。

 その時、パソコンの調子が急に悪くなる。

 オークションで安く買ったパソコンはいつものフリーズ。


 思わず「またかよ・・・」と呟き、再起動の操作をしようとした。その時

「じゃじゃじゃ~~~ん」と、まるでベートーベンの運命を思わせるような不気味な音楽が鳴りパソコンが復帰した。

 すると勝手にブラウザが起動し


「こんにちは・・・聞こえますか?」という声がした。


 アンは、びっくらこいて

「なんじゃ、お前は!いつからしゃべれるようになったんじゃ」

とパソコンに尋ねた。

 すると、パソコンから

「やった~~~遂に完成だ!!!」というこどもの声が聞こえた。思わず、

「何が完成したの?」とアンが聞くと

「タイムネットの相互通信ですよ」とこどもが答えた。

「何なの?それ」とアンが聞くと

「今は西暦何年ですか?」と質問に質問で答える日本的会話が返って来た。

「2021年だけど」とちょっとイラつきながらも答えると

「良かった。計算通りです」と訳の分からない答えが返って来た。

「キチンと説明して!」とアンがきつく問いかけると

「すみません。こちらは2121年です」という答えが返って来る

「おいおい、冗談は顔だけにしてくれよな・・・」と、顔が見えない中でつい口走る

「面白いですね。おじさん」と、こどもに笑われる。思わず

「それほどでも~」と照れるオヤジであった。

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