第22話 1日目 師匠の役目
月明かりの下。
何度かコーンポタージュを口に運んだ
「告白……されました」
意外過ぎる言葉に、少しだけ驚いてしまう。
まさか、
「違いますよー。男子に、です」
なんだ?
心を、読まれた、だと!?
「師匠はすぐ顔にでるから」
そう小さく呟いて、クスクスと
居た堪れなくなった俺は、自分の分のコーンポタージュを作ってお茶を濁す。
「今までに何度も告白されて、その度に断ってきたのに……」
告白のリピーター、か。
気のない相手にされても、まったく嬉しくないだろうな、そんなの。
「まったく……私をどれだけ軽い女だと思っているのか」
そうだな。
コイツ、
練習がてら行った、デイキャンプ。
俺はそこで、キャンプの基礎を教えていた。
あまり器用ではない
たまに泣き言や文句も言うが、必ず最後までやり遂げてきた。
そんな真摯な女の子が、軽い女なんて思えない。
ましてやビッチなんて、絶対に有り得ない。
そう思っていた。
最初の告白は、入学して間もなくだったと言う。
そこから一年で、計六回。
よくもまあ懲りずに、そんなに告白出来るものだ。
ある意味羨ましい行動力である。
「まーた変な噂、流されちゃうなぁ……」
ワンダーフォーゲル部のそいつには、取り巻きがいるらしい。
確証が無いため、何もできないが。
「
突然立ち上がった俺を、フードの奥から
俺は強引に
「あんっ」
俺の隣に座らせた。
そして。
おもむろにポケットから麻縄を引っ張り出して。
「え?」
「練習だ、
一瞬ぼかんと口を開けて俺を眺めて、
「あはは、何それ」
「うるせぇ。俺はコミュ障だ。こんな時に気の利いた言葉なんて、まず言えない。だから代替案を提示する」
夢中になれ。
目の前の、ひとつの事に集中しろ。
その通りに
夢中になって、無心になるまで。
あれこれと悪い未来を考えなくて済むようになるまで──
着火の秘密特訓を終えた俺と
「師匠の力は絶大、ってやつですかぁ?」
その言葉を聞いた
そんな
「あっちの男、こっちの男なんて、取っ替え引っ替えしてるからぁ」
「してない!」
俯いたまま、
小さく白い拳は強く握られて朱に染まり、小刻みに震えている。
その様子を見て満足気に笑った
「あたし、負けませんから」
そう言い捨てて女子部屋に向かう
さて、困った。
このまま
「だ、大丈夫。一晩くらいリビングで」
「いや、テントを張ろう」
俺は男子部屋に戻り、事情を説明しつつ持参した簡易テントを引っ張り出した。
リビングに戻ると、
「え、そんな物まで持ってきてたの!?」
「……お前たちと同じ班になれなかった時の保険、でな」
「それでやけに荷物が多かったんだね……」
呆れて笑う
月明かりと部屋から漏れた照明でテントを組み立てていくと、
「これ、安かったんだよ。軽いし。雨の日に使えないのが難点だけどな」
言い訳がましく背後に呟きながら、小さなテントを組み上げた。
コテージの外の地面にグランドシートを敷き、その上にテント置いて、備品のペグで簡単に固定する。
「ま、シェルターの代わりにはなるだろ」
うむ、やはり小さい。
さすがは一人用テントだ。
カタログ上は、長さ二メートル、幅一メートル。高さも一メートルだ。
チャックを開けて、中を見る。
「安っぽい作りだが、何とかなるだろ」
中にあるフックに小さなランタンを提げて、マットを敷く。
試しに横になってみると、案外悪くない。
寒くも暑くもなく、一晩くらいなら快適に過ごせそうだ。
さて、とりあえず宣言しとくか。
「ここを、キャンプ地とする」
背後を振り返って宣言するが、あれ?
「やっぱり気に入らなかった、か」
仕方ない。
せっかく設営したのだから、今日は俺が泊まってやろう。
そう決めて一旦部屋に戻り、これまた簡易的な寝袋を引っ張り出す。
その様子を訝しげに見ていた
「悪い、テントで寝る」
と言い残して男子部屋をあとにした。
待ってろ新しいテントよ。
今から寝てやるからな。
テントに戻ると、ランタンの灯りが透けて見える。
やっぱり安いだけあって、生地が薄いな。
「さて、お邪魔しますよ」
テントに転がり込んで、寝袋を敷く。
うむ、ちょうど良い。
さてスマートフォンでネット小説でも読むか。
と思ったその時。
「私も、入っていい、かな」
テントの隙間から、
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