第19話 1日目 夕食
夕方六時半。
カレーが出来上がった。
火の管理は
メインの調理担当は
特に男の娘もとい新井くんの料理スキルが高く、ありあわせの材料でサラダまで用意してくれた。
本人いわく、
「今日のうちに使った方がいいお野菜があったので」
との事だが、このスキルは素晴らしい。特に野菜に「お」をつけるなんて、奥ゆかしさすら感じてしまう。
はにかむ新井くんは、最初は自信なさげだったけれど、班に貢献できたという自負で、少しずつ自然な笑顔が増えてきた。
つか、やっぱり美少女だ。
メインは、夏野菜カレー。
これは
カレーに入れる野菜を直接焚き火に乗せて焼き、それを豪快にカレーにぶち込む。
一見粗野とも思える調理法だが、これが大好評だった。
新井くんや
途中で見回りに来た先生の味見の結果、A判定の太鼓判を押されるくらいの出来上がりだった。
さて、これで試練の判定は終わった。
あとは、お楽しみの時間だ。
「せーんぱい、なに二人でコソコソ目と目で通じ合ってるんですかぁ?」
なぜか縁もゆかりもないうちの班に自ら入ってきた、わがまま系のあざとい一年生女子。
こいつには、疑問に思う点が多過ぎる。ゆえに、どうしても警戒してしまうのだ。
「いや、ちょっと
「デザートですかぁ!?」
テンションを上げて
「きっときっと、
黙々と作業をする
「みんなにも知らせてきますねー、
「待て、そんなにハードルを上げるてやるな。これでも
なるべく角が立たないように
「だってぇ、かの有名なビッチ先輩が作るデザートなんて、どんな味なのか興味あるじゃないですかぁ〜」
そんな
俺は、何も言ってやれなかった。
「美味っ、やるな嬢ちゃん」
最初に感想を叫んだのは、意外にも
いちばんスイーツと縁遠そうな奴なのに、きっと元気が無い
「うん、すごく美味しい」
「
実際、材料が乏しい中で良く作ったと思う。
味の方も、キャンプのデザートとしては文句がない美味さだ。
が、しかし。
その様子を見ては、
その夜、
コテージの男子部屋。
「なんだあの
食材配布の時も、勝手に着いてきてペースを乱す羽生に苛立っていた。
出来ることをやり、出来ないことは出来る人に任せる。
これはキャンプだけでなく、日常の集団生活でも大事なことだ。
逆を言えば、それが出来なかったから俺はソロキャンプをしているのだが、それは今はいい。
「新井くん、
不安げに大きな瞳を揺らす新井くんに水を向けてみる。
「ボクもあんまり友達多くないので、噂くらいですけど……」
新井くんは、薄氷を踏むように慎重に語り始める。
常に数人の男子にお姫様扱いされていて、ご褒美をチラつかせてその男子たちをパシリにしている、と。
そうなると、当初の疑問が強くなる。
「そんな奴が、なんで知り合いのいないオレらの班に入ったんだよ」
そう、それだ。
自分をお姫様扱いしてくれる男子たちがいるのなら、そいつらがいる班に入るのが妥当だろう。
「アイツ、なんか嬢ちゃんに恨みでもあるんじゃねェか?」
吐き捨てるように言う
「そういえば、羽生を班に入れて欲しいと言ったのは、
鍵は、
俺はスマートフォンを取り出して、メッセージ画面を開いた。
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