第6話 わくわくドキドキお店めぐり
「着いたー」
まるで月面に着陸したようなテンションで
すでに時刻は夕方、けっこう人が多い。
その多くの人、特に学生らしき男子が
着いたーとか叫んだせいもあるが、理由は
これがイマドキの女子高生というやつなのだろうか。
肩よりも長く光る、明るい栗色の髪。
少し丈の長いブレザーの胸元に覗く、白いシャツとアゲハ蝶のようなネクタイ。
膝上丈のスカートからは、すらりと白い生足が伸びていて。
なるほど、これは目の毒だ。
こいつは、多くの男たちを惑わせるギャルという生き物だと、あらためて実感した。
ふう、俺が他人に興味が無い奴でよかった。
素早く目を逸らして危険回避してよかった。
あぶない、あぶない。
「……何してるの師匠、早くいくよ」
ジトっとした目で見るなスカートを押さえて隠すな。
ちょ、ちょっとしか見てないから！
そもそも、弟子なら師匠を急かすなこのやろう。
絶対こいつには機能性重視のダサいアウトドアウェアを着せてやろう。
などと面と向かって言えるはずもない俺は、黙って
店内に入った途端、目の前にテントが張ってあった。
そろそろキャンプ商戦のシーズンか。
「うわー、このテント、おっきいねー」
「ファミリー用だろう」
「いいなぁ、いつかあんなテントで……」
何故かうっとりし始めてた
「ここで見るのは、テントと寝袋だ」
「ランタンとかは？」
「それはあとでいい」
すたすたと歩きつつ、お目当ての商品を見つけて立ち止まる。
「これだな」
手に取った商品は一人用の、いわゆるツーリングテントと言われるものだ。
その中でも比較的設営のしやすそうなドーム型のテントを持って、
「これなんか良さそうだな。特売品だし、値段も手ごろだ」
「おお、ちゃんとしたテントだー」
当たり前だ。
この前のサンシェードとは用途が違う。
ちゃんと雨避けのフライシートも付いている、ちゃんとしたテントである。
「ほえー、色も可愛いし、なんか良さそう！」
「なら候補のひとつに「これ買う！」……え？」
「そんなに簡単に決めていいのか？」
「大丈夫、だって師匠が私に選んでくれたんだもん」
「おい、使うのはお前だぞ？」
「いいのいいの。さ、次は寝袋だねー」
……なんか調子狂うなぁ。
女子の買い物は時間かかるという言い伝えは、ガセだったのか。
寝袋コーナーでまずやる事は、確認作業だった。
「
たしか色はネイビー、ブランドロゴは見えなかった。
「あ、これだよ、これ」
たたたた、とんっ、と駆けて行った
てか、九八〇円！？
「ね、安いでしょー」
「まあ、安いな」
たしかに安い。が、その安さには理由がある。
ひとつは、材質。
そしてもうひとつは、使用温度だ。
「お、あったあった。これ見てみろ」
「ん？ どれ？」
くりんと傾けた顔を
途端に女の子特有の、あのカフェに立ち込めた甘い匂いが漂う。
つか顔が近いんだよ。
ったく、ビッチと言われるだけあるな。距離感がおかしい。
思わずのけ反って距離を取ると、
まつ毛、長いな。
頬っぺた、つきたての餅かよ。
唇は……げふんげふん。
ダメだ、やめよう。
咳払いをひとつ、一歩引いて
「そこにタグがあるだろ」
「うん、でも意味わかんない」
「その表記だと、最初の数字が快適に使える気温、次が下限気温だ」
「下限、気温って？」
「その寝袋で生命を維持できる、最低気温だな」
つまり気温五度なら辛うじて生命を維持できる、という意味だ。
「これでわかったろ。あのキャンプ場で寒かった理由が」
「うん。私、すごく危ないことをしてたんだね」
「じゃあ、寝袋も買い直さないと」
「いや、いい。インナーシュラフを使えば、な」
この後いろいろ説明したが、次に行きたい店もある。
早めに切り上げて店外に出ると、
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