6-6. フレッシュなクローン
「ちなみにどこにバックアップは取ってあるんですか?」
「金星だよ」
「き、金星!?」
なぜ、海王星のサーバーのバックアップが金星にあるのだろうか?
困惑してるとレヴィアが横から説明してくれる。
「海王星は金星のサーバーで作られておるんじゃよ」
「金星のサーバー……?」
俺は一瞬何を言ってるか分からなかった。なぜ海王星が金星で作られてるのか……?
えっ、もしかして……。
ようやく気が付いた。地球が海王星で作られているのと同じように、海王星もまた金星で作られていたのだ。
「海王星も仮想現実空間だったのか……」
俺は今まで海王星こそがリアルな世界で、そこで地球がたくさん作られているのだと思い込んできたが、海王星もまた作られた世界だったのだ。そう言えば、レヴィアが『ヴィーナ様は金星人』と言っていたのを思い出した。そうだったのか……。
「えっ、それじゃ金星がリアルな世界ですか?」
俺はシアンに聞いた。
シアンはニッコリとしながら首を振って言った。
「まだまだ上があるよ! 水星、土星、天王星、木星……」
俺は気が遠くなった。何なんだこの宇宙は……。
「海王星が生まれたのが六十万年前、金星が生まれたのが百万年前……。星が生まれて五十万年位経つと新たな星を生み出しちゃうんだよねっ」
シアンはうれしそうに言う。
と、その時、キィーンという高周波が響き、まぶしい光がホールにほとばしった。
「うわぁ!」「キャ――――!」
悲鳴が上がる。
光が収まって見ると、空中に金色のドレスの女性が浮いていた。整った目鼻立ちに鋭い
レヴィアが駆け寄ってビビりながら言う。
「こ、これはヴィーナ様! わざわざお越し下さり……」
「レヴィア! これは何なの!?」
ヴィーナはそう言ってレヴィアをにらんだ。
「これは……そのぉ……」
冷や汗をかき、しどろもどろのレヴィア。
「ヌチ・ギという管理者が悪さをしたんです」
俺が横から説明する。
「あぁ、あなた……豊くん……ね。ずいぶんいい面構えになったわね」
ニヤッと笑って俺を見るヴィーナ。
「転生させてもらったおかげです。ありがとうございます。なぜ……、サークルで踊っていた時と感じが……違うんですか?」
「あぁ、あの子は私のクローンなのよ。私であって私じゃないの」
「えっ!? クローン?」
「あの子は地球生まれだからね、ちょっとフレッシュなのよ」
そう言ってニッコリと笑った。
「そ、そうでしたか……」
違う人なのか、とちょっと落胆していると、
「ふふっ」
そう笑ってヴィーナは踊りだした。リズミカルに左右に重心を移しながら、足をシュッシュと伸ばし、肩を上手く使いながら腕を回し、収める。
それは一緒に踊ってた時の振り付けそのままだった。
俺は続きを思い出して踊る……。
右に一歩、戻って左に一歩、腕をリズミカルに合わせる。
すると、ヴィーナもついてくる。
一緒に手を回し、右足を出すと同時に左手を伸ばし、次は逆方向、今度は逆動作をしてクルッと回って手を広げた……。見つめ合う二人……。
俺はニヤッと笑って両手を上げる。そしてハイタッチ……。
「覚えててくれたんですね」
ちょっと息を弾ませながらそう言うと、ヴィーナは、
「記憶と体験は共有してるのよ」
そう言ってニッコリと笑った。
俺は覚悟を決めて切り出す。
「この星は、確かに今までは問題だらけでしたけど、これからは変わります。だからもう少し様子を見てて欲しいんです」
ヴィーナは俺をジッと見る……。
そして、ホール内のたくさんの女の子たちをぐるっと見回してつぶやいた。
「さて……、どうしようかね……」
胃の痛くなる沈黙が流れる。
「まずはこの子たちを何とかしてからね」
ヴィーナはそう言うと、ターン! とパンプスでフロアを叩いた。
フロアに金色に輝く波紋が広がり、壁面を駆け上がっていく。
巨大なホールに次々と広がる美しい金の波紋……、一体何が起こるのだろうか?
そして波紋は天井で集まっていく……。
直後、金色にキラキラと輝く粒子が宙を舞いはじめ、ホールは金色の輝きに埋め尽くされていく。
「うわぁ! すごぉい!」
ドロシーが感嘆の声を上げる。
そしてヴィーナは
「うわぁ!」「キャ――――!」
俺たちは思わずかがんでしまう。
「きゃははは!」
シアンだけはうれしそうに笑っている。
------------------------------------------------------------------------------------
■作者コメント
いよいよエンディングまであとわずか、
皆さんの応援でここまでやってこられました。
ありがとうございました。
心より御礼申し上げます。
美奈先輩やシアンは姉妹作の
ヴィーナシアンの花嫁 ~シンギュラリティが紡ぐ悠久の神話~
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892348682
こちらの登場人物です。
彼らに興味がある方はぜひご覧ください。
なぜ、美奈先輩がクローンなのか、シアンがなぜ宇宙最強なのかも……分かるかもしれません。
それではあともう少しお付き合いください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます