6-2. 最新型iPhone
ログハウスのデッキでレヴィアはスマホを取り出した。まさかこの世界でスマホを見ることになるとは……。
カメラレンズがいくつもついたゴツくて、でもスタイリッシュなピンク色のスマホの電源を入れると、懐かしいリンゴのマークが浮かんだ。
「え!? もしかしてiPhone……ですか?」
「そうじゃ、最新型じゃぞ、ええじゃろ」
レヴィアはニヤッと笑う。
「え? 電波届くんですか?」
「ちっくら空間をつなげて電波を拾うんじゃ」
「女神様に連絡取るのにスマホってなんだか不思議ですね……」
「こういうローテクのガジェットというのは風情があって人気なのじゃ。それに正式な申請だとご本人まで届かんかもしれん……」
なるほど、こういうお願いならスマホが一番かもしれない。
「さて、かけるかのう……。ふぅ……。緊張してきた……」
ひどく緊張した様子のレヴィア。こんなレヴィアを見るのは初めてだった。
レヴィアは大きく息をして、覚悟を決めるとスマホの『ヴィーナ様♡』をタップした――――。
「ご無沙汰しております~、レヴィアです。あ、はい……はい……。その節はどうもお世話になりまして……。はい。いや、そんな、滅相もございません。それで……ですね……。ちょっと、ヴィーナ様に一つお願いがございまして……。え? いや、そうではないです! はい! はい!」
レヴィアの敬語なんて初めて聞いた。額には冷や汗が浮かんでいる。
「その辺りはご学友の瀬崎豊が説明すると申しておりまして……。はい、はい……」
いきなり俺に押し付けられている!?
聞いてないぞそんなこと……、俺まで緊張してきた。
「え? 猫? もう、猫でも何でも……」
猫? 全く話が見えない。なぜ猫の話なんてしてるのか?
「では、今すぐ転送します。はい……、はい……。では、よろしくお願いいたします」
電話を切ると、レヴィアはふぅ……と大きく息をはいた。
「と、言うことで、お主、ヴィーナ様に説明して来い」
丸投げである。
「え? 『蜘蛛退治してくれ』って言えばいいですか?」
「バカもん! そのまま言うバカがおるか! 『文明文化発展の手がかりを得たが、その邪魔をする蜘蛛がいるので少し手助けして欲しい』って言うんじゃ!」
レヴィアは顔を真っ赤にして怒る。
「わ、分りました」
「言い方間違うと、この星無くなるからな! 頼んだぞ!」
そんな大役をなぜ押し付けるのか。
「じゃあ、レヴィア様ついてきてくださいよ!」
俺はムッとして噛みつく。
「あ、いや、ここはご学友の交渉力に期待じゃ。我が行くとやぶ蛇になりそうじゃから……」
なぜだか相当にビビっている。美奈先輩ってそんなに怖かったかなぁ……。
「分かりました、行ってきますよ」
「そうか? 悪いな、任せたぞ!」
ホッとしてうれしそうに笑うレヴィア。
俺は、弱ってチェアの背もたれにぐったりともたれかかっているドロシーの頬を撫で、言った。
「ちょっと行ってくるね、待っててね」
「あなた……、気を付けて……」
うるんだ目で俺を見るドロシー……。透き通る肌は心なしか青白い。
俺は胸が痛み、愛おしさが止まらなくなり、優しくキスをした。
「ユータ、時間がないぞ。ドロシーは
「ありがとうございます」
俺はペコリと頭を下げた。
「では、転送じゃ」
レヴィアはドアをガンと開けると、ログハウスの中に俺を引っ張っていった。
「なんじゃ、何もない部屋じゃな……。これで本当に新婚家庭か?」
なんて失礼なドラゴンだろうか。
「これから二人で作っていくんです! で、何すればいいですか?」
「あー、では、ベッドに寝るのじゃ。意識飛ばすから」
そう言って俺をベッドに座らせた。
「ありゃりゃ、シーツに血が残っとるぞ。キャハッ!」
初夜の営みの跡が残ってしまっていた。
「み、見ないでください!」
俺は急いで毛布で隠し、真っ赤になりながら横たわった。
「恥ずかしがらんでもええ。ちゃんと見ておったから。では頼んだぞ!」
レヴィアは手を上げ、何か呪文をつぶやく。
「えっ!? 見て……」
俺が抗議しようとした瞬間……、気を失った。
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