4-11. 禍々しき光のリング
辺りは見渡す限り焦土と化しており、あの
俺はそのあまりに凄惨な事態に思わず目をつぶって首を振った。ヌチ・ギはこの調子ですべての街を焼くつもりだ。何としても止めないとならない。
見ると、遠くの方で
俺は大きく息をつくと飛行魔法で飛び上がった。レベル六万の魔力はとてつもなくパワフルで、ちょっと加速しただけで簡単に音速を超えてしまう。俺はおっかなビックリ飛びながら飛び方に慣れようとした。
『あなた、逃げてぇ!』
いきなりドロシーが叫んだ。
俺は何だか良く分からず加速したが、次の瞬間、
「うぉぁ! ヤバッ!」
さっきまで遠くにいたはずなのに、気が付くと間合いに入ってる、まさに無理ゲー。こんなのどうしろというのか?
しかし、泣き言いってる暇もない。俺は試しにエアスラッシュを
『逃げてぇ!』
「ひぃっ!」
またもギリギリでかわす俺。
こうやって何度かかわしているうちにコツがわかってきた。直線的に飛んではダメだ。予測できないようにジグザグに飛び続ける事、これでかく乱し続ければなんとか諏訪湖まで行けるかもしれない。
俺はわずかな希望にすがり、命がけのジグザグ飛行を続けた。
『上に来るわ!』
ドロシーが叫んだ。
「え?」
俺は半信半疑で上にエアスラッシュを放った。すると、
「なんでわかったの!?」
『下への攻撃態勢になって跳ぼうとしてたのよ』
「すごい! ドロシー最高!」
俺はドロシーの観察力に感謝するとともに、少しだけ糸口がつかめた気がした。
『くるわよ――――、右!』
「ほいきた!」
俺は右にファイヤーボールを乱れ打ちした。
出てくるなりファイヤーボールの嵐を食らって吹き飛ばされる
『やったあ!』
ドロシーの喜ぶ声が響く。
「ドロシー、才能あるかも」
俺が褒めると、
『えへへ……』
と、照れていた。
これで諏訪湖にずいぶんと近づけた。いけるかもしれない。
が、その時だった。急に辺りが真っ暗になった。
「ええっ!」
驚いて空を見上げると、太陽が月に隠されている。皆既日食だ。いきなりの夜空に浮かぶ壮大な光のリング、俺はその恐ろしいまでの美しさに身震いがした。
ヌチ・ギの仕業だろう。月の軌道をいじるなんて、とんでもない事をしやがる。ラグナロク開始を世界中に知らせるためだろうが、実に困った。こんな真っ暗では上下も諏訪湖も
『あなた、どうしたの!?』
「いきなり真っ暗になった。何も見えないんだ」
俺はつかみかけていた調子をいきなり崩された。
戸惑っていると、ドロシーが叫んだ。
『ダメ! 危ない、逃げてぇ!!』
俺は急いで方向転換をしたが……、間に合わなかった。
ガスッ!
「グォッ!」
俺は全身に燃え上がるような痛みが貫き、うめいた。
飛行魔法が解け、きりもみしながら落ちていく……。
『いや――――! あなたぁ!!』
ドロシーの悲痛な叫び声が響いた。
ドスッ!
地響きを伴いながら激しく地面に叩きつけられ、俺は意識を失った。
真龍を真っ二つにした剛剣がまともに入って上空から墜落……、誰しも俺の死を疑わなかった。
妖しく揺れる皆既日食に覆われた戦場には、静けさが戻ってきた。
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