4-12. 本番行ってみようか
そこは暗闇……、なぎ倒されて
俺は衝撃で意識が混濁し、自分が今、何をやっているのか分からなかった。
見上げると満天の星空の中に美しい光のリングが浮かんでいる。リングから放たれる幻想的な
『あなたぁ! 聞こえる? あなたぁ! うっうっうっ……』
ドロシーの声が頭の奥に響く……。
ドロシー……、俺の愛しい人……、どうしたんだろう……。
身体のあちこちが痛い……。
「いててて……」
『あなたぁ! 大丈夫?』
ここで俺はようやく正気を取り戻した。
「あ、あれ? 生きてる……」
『あなたぁ! 無事なの!?』
「うん、まぁ、なんとか……」
『あなたぁ……、うわぁぁん!』
ドロシーの泣き声を聞きながら、俺は斬られたところを見てみた。すると、胸ポケットに入れていたバタフライナイフがひしゃげていた。なるほど、こいつが俺を守ってくれたらしい。
まさに九死に一生を得た俺はふぅっと大きく息をつき、自らの異常な幸運に感謝をした。
◇
やがて皆既日食は終わり、また、明るさが戻ってきた。
俺は気合を入れなおすと、全力で諏訪湖に向けて飛んだ。
超音速で派手に衝撃波を振りまきながら飛ぶ俺を見つけ、
「レヴィア様! 連れてきましたよ!」
『ご苦労じゃった、こっちもスタンバイOKじゃ!』
諏訪湖上空でちょうど
いきなり立ち上がる真っ黒な円柱。それはこの世の物とは思えない禍々しさを放っており、俺は思わず息をのんだ。
やがて、円柱はぼうっという重低音を残し、消えていく。諏訪湖の水も
これが……、神々の戦争……。
俺はその圧倒的で理不尽な力に身震いがした。
『イッチョあがりじゃぁ!』
レヴィアのうれしそうな声が響く。
『あなた、お疲れ様! 良かったわ!』
ドロシーも喜んでいる。
ひとまず、難敵は下した。俺は大きく息をついた。
「いやぁ、ドロシーのおかげだよ、グッジョブ!」
俺はドロシーをねぎらった。彼女がいなかったらダメだったかもしれない。
夫婦で力を合わせる、それはとても素敵な事だなと思った。
◇
『おーい!』
諏訪湖
「お主、よくやった!」
満面の笑みでレヴィアは両手を上げる。
「いやー、死にかけましたよー!」
俺たちはハイタッチでお互いの健闘をたたえる。
「イエーイ!」「イェーイ!」
金髪おかっぱの少女は屈託のない笑顔を浮かべ、俺も達成感に包まれた。
「レヴィア様の技、驚かされました。何ですかこれ?」
「『強制削除コマンド』じゃ。対象領域を一括削除するんじゃ。このコマンドで消せぬものはない。どうじゃ? すごいじゃろ?」
ドヤ顔のレヴィア。
「『強制削除』……ですか? もっとカッコいい名前かと思ってました」
レヴィアは一瞬固まると、
「……。いいんじゃ……。我はこれで気に入っとるんじゃ……」
と、露骨にしょげた。
ちょっと言いすぎたかもしれない。
すると、いきなり声が響いた。
「やるじゃないか、ドラゴン……。さて、本番行ってみようか」
声の方向を見るとヌチ・ギが空中を大きく引き裂いているのが見えた。
まさか……と、思っていると、空間の切れ目からゾロゾロと
俺たちは
一人ですらあんなにてこずった
美しいブロンドをふわりとなびかせながらゆっくり降りてくる色白の乙女。豪快に着地しエキゾチックな褐色の肌を大胆にさらしながら、漆黒の剣をブンブンと振り回す快活な乙女。豊満な胸を揺らしながら大きく伸びをしてストレッチをする茶髪の乙女。ヌチ・ギの方を向いて何か言葉を交わす黒髪ポニーテールの細身の乙女。皆、ため息が出るような美人ばかりである。
「こらアカン……撤退するぞ」
レヴィアはウンザリとした表情でそう言って、俺の手をつかむと空間の裂け目に逃げ込んだ。
さらに苛烈さが増す予感の第二ラウンド、俺は神々の戦争に巻き込まれてしまった運命を呪った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます