初恋は教え子らしい

ぴ√

プロローグ

 雨の滴る音と、手元にある質素な花束、妙に手に張り付くエナメル製のメッセージカードが、まるで私に涙を流せと促してくるような錯覚に陥る。なんでもないただの送別会じゃないか。たったの2週間、自分の研究目当てで絡んでいるこんなサンプルに、どうして世間の教育実習生は心から別れを惜しめるのだろうか。いや、どうして世間は私たち実習生に涙を求めるのであろうか。あれこれ頭の中で屁理屈を呟きながら何秒経っただろう。瞬きを止めていた瞳は潤いを欲し、私の頬には、やはり想像通り水の感触があった。






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 窓を殴るように打ち付ける雨粒を眺めながら、頬杖をついていた。最新のイヤホンはやはり快適だ。2週間前からいる実習生が今日で実習を終了するようだ。何か話してるようだが、流石は最新のノイズキャンセリングである。全く周りの音に気を配らず、自分の世界に浸れる。ところで、なぜ出会って2週間しか経っていない生徒との別れで感傷的になれるのであろうか。教師を志しているのであろう実習生の感性は俺には理解できない。きっと解り合えない人種なのであろう。

 隣の席の上石萌絵が手を叩き始めたのが視界に入り、意識を右の掌から流れてくる洋楽へと移した。

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