居場所の迷子
一色 サラ
01 オーバー
ドンドンと、部屋のドア強く叩く音が聞こえてきた。「信さん、起きてますか?少しお話したいのですが。」遠島自立支援センター職員である
ただ、液晶画面に映るゾンビをバンバンと音とともに倒れていく。コントローラーのボタンを連打して倒していく。液晶の光が異様な室内を照らしだす。現実逃避するよに、信はゲームの世界に飲め込んでいた。
「この施設は満22歳まで入所可能となってまして、信くんは24才なので、本来なら、退所していただかないといけない年齢なんですよ。」
ドアをノックしながら、通る声で東野の言葉が聞こえてくる。その度に現実に取り戻される。逃げても逃げても溢れていくゾンビ。どこにも逃げ場がないようにも思えてくる。
「うるせいなあ。どっかいけよ!!」
怒りが込み上げて、叫んだ。
「申し訳ありませんが、今日は10月16日ですので、10月末で退所ということになりました。それまでに部屋の片付けのほうをよろしくお願いいたします。」
何の躊躇もない東野の声が、信の心の叫びを撃ち殺しくる。
「出ていく気はなんてねーよ」
「もう決まったことなので」少し間をあけて東野は言って階段を降りて行く音がした。苛立ちが募っていく。人の話をまともの聞いてくれない東野の無神経さに腹が立っていく。退所は先月には通達はされてことは知っているけど、出て行く気はない。画面を睨みにつけて、ゾンビが頭を壊れていく。
どうして、こうなってしまったのだろう。親への反抗もある。もう1つはあの女の存在だ。「ダッサ、きも、居るだけ邪魔なんだよ」と高校の時に言われて続けてきた。 ただ、そのあの女以外の女子からは何も言われたことがなかった。だけど、たった1人の女から言われただけど、今も心傷になって残っている。
高校の時に友人は『武藤って、友達いなーし。気にする必要なくない』と言われたけど、ずっと引きかかっていた。『それか、信のことが好きなんじゃないの?』と友人に言われて、それならと思って一度確認したことがあった。そしたら、『そんなわけねえだろう』と返された。また心がえぐられてしまった。それから、女性と話すことが苦痛になってしまい。女性恐怖症になってしまった。
「女性がそんなに怖いですか?」
急に、東野が立っていた。ノックもせず、勝手に入ってきた。
「勝手に入ってくんなよ」
「そうですね。申し訳ございません。で、信さんにお話です。次の引っ越し先ですが」
パフレットを渡された。車の工場だった。
「そこに、言ってもらうことになりました。」
「なんで?」
「まあ、無理なら無理で、一回働いてみてください。ここには女性はいませんから」
なんか、見透かされた気分になった。もう逃げても仕方ないのかもとどこかで諦めていた。東野が次の居場所を探してくれたことに、感謝しないといけないのだろう。
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