堕とされた神 〜いろんな謎あり、苦難あり。異世界冒険記〜

@Goodnightworld

プロローグ 「過ちの始まり」

 【天上庭園】



 神々の暮らす世界。ありとあらゆる神々が存在している。



 そのうちの1柱、ハザクは、『生誕神』レピドに呼ばれ、彼女の〈小世界〉に訪れていた。



 〈小世界〉は、その神の存在そのものを示す。どこまでも伸びていく樹木や、様々な生物。それは彼女が『生誕神』ゆえだろう。



 「よく来てくれましたハザク。本当は、貴方にここには踏み入って欲しくはないのですが……。今回は致し方ありません。すぐに用事を済ませましょう。」



 「自分の〈小世界〉に来いって言ったのはお前だろ。それに、思ってることをすぐ口に出すのは直した方が良いって前に言わなかったっけ?。まぁいいや。用って何?」



 彼女はこちらをじっと見つめる。俺は昔から、彼女のこういうのが少し苦手だった。何を考えているのか分からない。



 「……何故貴方は、私の子たちを死なせてしまうのですか?」



 「……え?いや、そんなこと聞かれても困るなぁ。それが[秩序]としか言えない。」



 「何も死なせなくても良いではないですか!貴方に分かりますか? 目の前で生み出した子たちが死ぬのを見る気持ちが!」



 「いや、[秩序]なんだって。俺『死神』だし。」



 そう、俺は『死神』だ。相反する[秩序]だからか、彼女とは馬が合わない。



 「……少し考えてみたのです。『死神』が存在する理由というのを。考えた結果、『死神』は必要ないという結論になりました。」



 「おかしいだろ!『死神』がいないと[死]の[秩序]は廻らない。[秩序]が狂うぞ!」



 「いいえ。廻ります。『死神』というのは、[死]の[秩序]を強めているだけ。付属品に過ぎません。『死神』がいなければ、最低限の[死]で済みます。故に必要ないのです。」



 ー暴論だろ



 流石にそう思ってしまう。『死神』が本当に必要ないのなら、全ての始まりである『創造神』様が、『死神』など創り出すはずがない。



 「他の神々も同じ意見でした。『死神』が存在するから、争いが生まれ、[死]による悲しみが増えるのです。よって、貴方を【天上庭園】から、追放することにします。もう『死神』は必要ありませんので。」



 「は?」



 おかしい。必要に決まっている。あらゆるバランスが崩れるかもしれないのだ。それに、いらないから追放など、出来るはずがない。自分は、[死]を司る神なのだから。自分の[死]の力を振るえば、神でもただでは済まない。



 「俺を追い出すって言うんなら、痛い目みるぜ。今回ばかりは力を使っても怒られんだろうし。まぁ、相反する[秩序]どうしだ。200年も争えば、お前も折れるだろ。」



 「出来ないとでも思っていますか?たしかに、貴方は『死神』、私は『生誕神』。相反する[秩序]の神が争ったところで、決着はつきません。ですが言ったでしょう? 他の神々も同じ意見だと。」



 ゴーン



 無機質な音が響く。



 そして気がつく。



 ー体が動かねえ



 「『時空神』に頼みました。彼も様々な歴史を見てきて、深く悲しんだ1人で、『死神』は必要ないと、私に賛同してくれました。本来、貴方には時間停止は効きません。[死]とは[終焉]。時間に縛られず、あらゆるものを死なせてしまうからです。時間でさえも。」



 その通りだった。時間停止など効くはずがないのだ。



 「表情が動いているということは、これでもまだ完全には無力化出来ていないということですか……。これには驚きました。なぜ時間停止が効くのか、分からないという顔をしていますね。簡単です。ここでは、[生誕]の〈小世界〉では、貴方の力は弱まるからです。」



 ーだからわざわざ自分の〈小世界〉まで呼んだのか!



 後悔しても遅い。こんなことになるなんて、予想出来るはずがない。



 「まぁ、ここまで抑え込めていたら大丈夫でしょう。」



 そういうと、彼女は、手を合わせ、呟く。



 「神門解放」



 次の瞬間。俺の足元に、魔法陣が浮かび上がる。



 「その先は【下界】に繋がっています。【下界】では、いくら貴方でも満足に力は使えないでしょう。まぁ、バランスにこだわる貴方が、[死]の力をいたずらに振るうことはないでしょうし。では、さようなら。」



 魔法陣が光り出す。



















 次の瞬間、俺は平原に立っていた。



 「レピドォォォォ!」



 俺の叫びは、どこまでもこだましていった。



 





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