第12話
装いを新たにした、コレスコとシャイネのヒロインコンビ。
コレスコは嬉しそうに、シャイネは恥ずかしそうに俺の元へと駆けてきた。
「じゃーん! 超イメチェンしてみたんだけど、どぉ?」
片脚を軸にしてクルリンと回り、全身をお披露目してくれるコレスコ。
ピチピチのショートパンツはむっちりとしたお尻の形が良くわかって……って、何見てんだ俺は!
「お、おにいちゃん、いかがでしょうか?」
シャイネもマネして、ぎこちなくその場で回っている。
膝小僧も露わな短いスカートが翻り、白いふとももがチラッと……って、見るなって、俺!
コレスコのキャミソールもシャイネのワンピースも、どちらもこれ以上ないくらい似合っていた。
思わず視線が釘付けになってしまうほどに。
しかしこれから俺たちは遊びに行くのではなく、冒険に行くんだ。
俺はごくりと唾を飲み込んでから、
「ど、どうしちまったんだ、ふたりとも……」
愕然と口にすると、コレスコが「えーっ」と不満そうな声を漏らす。
「もしかしてこれ、オッサン的にはイケてなかった?」
するとシャイネがみるみる悲しそうな顔になったので、俺は慌てて言い繕った。
「い、いや、すごくよく似合ってるよ! でもいくらなんでも肌を露出しすぎだろ!」
「もー、わかってないなぁオッサン。いまどきの女の子は、これくらいフツーだって!
シャイネだってがんばったんだから! ねー!」
「は、はひ! わたし、がんばりました!」
イメチェンしてからシャイネがずっとぎこちないと思っていたのだが、どうやら今の格好に慣れていないようだ。
無理もない。
シャイネは生まれたときからずっと聖女になるために躾けられてきて、幼い頃から聖女のローブが普段着だったんだ。
聖女のローブというのは、人体にある五つの首をすっぽり覆うくらいに裾が長い。
それに聖女はレースの白手袋が標準装備なので、肌は顔くらいしか露出しない。
シャイネはたぶん、膝上スカートなんて穿くのも初めてだから恥ずかしいんだろうな。
って、それだったらなおのことその格好は意味不明だ。
俺は、「万が一モンスターに襲われて、その綺麗な脚に傷でもついたらどうするんだ」と注意しようとしたが、
「旦那、このくらいの格好ならJRPGでは普通やで」
俺の隣で浮いていた妖精の横槍で、すべてを理解した。
「まさか……ふたりがこんな格好をしたのも、『神ゲー』スキルによるものなのか?」
「うぃ、そうや。JRPGからしたら、この程度はまだ慎みがあるほうやで」
「これで!?」
「『セクシャル』がまだ『12歳以上』やからな。
これが上がっていったら、もっとヤバいことになるでぇ。
ヘソは出すは半ケツになるわ、歩くだけでパンチラするわ戦闘になったらパンモロするわのお祭り騒ぎ!
最後はとうとう退○忍みたいな格好をするようになるんやでぇ!」
「妖精がパンモロとか言うなよ。
それに肌の露出が増えていくんだったら、『セクシャル』は元に戻したほうが良さそうだな」
すると妖精は信じられないモノを見るような目で、俺を見た。
「なんでや!? 旦那は修行僧やったんかい!?
あ、わかった! 安心せいや! 旦那が望むんやったら、男の仲間もそうなるさかい!
男の場合はさらにすごいでぇ! 最後は全裸にチ○コケースだけに……」
「さっきから何を言ってるんだお前は。俺が心配しているのは怪我のことだ。
肌に怪我をして跡でも残ったら大変だろう」
「なんや、そんなことかい。それやったら心配いらんで。
いくら攻撃されもヒロインの肌には傷跡が残ったりせえへんよ。
そんなの、『JRPG』の常識やんか」
「そうなのか? っていうか『JRPG』ってなんなんだよ……」
話の途中でいきなりギュウと腕を掴まれ、俺はそのモロな柔らかさに飛び上がりそうになった。
「うわっ!?」
「もー、オッサン、さっきからなにひとりでワケのわかんないこと言ってんの! そろそろいこーよ!」
「あ、ああ……」
俺はコレスコに引っ張られるようにして防具屋の前をあとにする。
再び大通りを歩いて森を目指していたのだが、ものすごくまわりからの視線を感じた。
無理もない。
コレスコとシャイネという、ただでさえ目立つ美少女をふたりも連れてるんだから。
前を歩いていたヤツらも、俺たちに道を明け渡すほどにビックリしていた。
通りすがりに、ヒソヒソ話が聞こえてくる。
「お、おい、見ろよ……」
「あれって、コレスコじゃねえか……。なんであんなさえないオッサンと一緒にいるんだ……?」
「しかもあの格好、すげぇなぁ……」
「いや、それよりも、オッサンの陰に隠れてる女の子を見てみろよ!」
「えっ!? あの子はまさか、小学生大聖女のシャイネ様!?」
「なんでシャイネ様がこんなへんぴな街に!? あの方は王都の聖女学校におられるはずでは!?」
「いや、つい最近、飛び級で卒業されたって新聞に出てたぞ!
卒業後はどの勇者様に仕えるか、新聞でも話題になってただろう!
っていうか、なんであんなオッサンと一緒に!?」
「このあたりの勇者全員が狙ってるギャル魔女どころか、この国の勇者全員が狙ってる小学生聖女を、引きつれるだなんて……!」
「あ、あのオッサン、いったい何者なんだ……?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それからは特に滞りもなく、目的地であるマジハリの森の洞窟に着く。
洞窟の前には小さなひとだかりができていた。
それは近隣の勇者小学校の子供たちで、引率の勇者がなにやら話をしている。
「さぁ、みんな! 今日はいよいよ、初めてのダンジョンだ!
ペロドスお兄さんにしっかりついてくるようにね!
女の子は特に、ペロドスお兄さんから離れちゃ駄目だよ!
言うことをきちんと守れた子は、ペロペロしてあげるからね!」
子供たちは「はーい!」と元気に返事をする。
その横を通り過ぎようとすると、ペロドスと名乗る勇者が俺に気付いた。
「あっ、みんな見てごらん! あそこにいるのは荷物持ちも出来ない役立たずのオッサンだよ!
あのオッサンはねぇ、あんなに老けてるのにサプライムに勝つのもやっとなくらい弱いんだよ!
だから力の弱い子供を襲う変質者になってしまったんだ!
みんなは絶対、あんな大人になっちゃダメだよ! むしろあんなオッサンを笑えるようにならないと!」
子供たちは「はーい!」と返事をしたあと、「あはははははっ!」と嘲笑を俺に向けてくる。
すると、真っ先にコレスコが反応した。
「ちょっと! このオッサンはたしかにカタツムリみたいに弱っちいけど、がんばってるんだよ!
それにゴブリンくらいだったらやっつけられるようになったし! ねーオッサン!」
「ゴブリンなんて、おれたちだってかてるよ!」
と、いかにもワルガキそうな子供から言い返され、さらに爆笑の渦に包まれる。
俺は笑われるのは慣れっこだったので無視するつもりでいたんだが、そうもいかなかった。
なぜならばふと見やったペロドスの頭上に、例のウインドウが浮かんでいたから。
勇者ペロドス
難易度:イージー(4ポイント使用中)
世界観:古典的RPG(1ポイント使用中)
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