7話『いいかおり』

私の目の前に真っ白な女性が姿を現した

それもなんとも唐突に


ある店に入りやっと独りになれたと少し目を逸した一瞬のことだった


いつの間にか女性が向いの席に座っていた

女性はドが付く様な美人だった

ただその白い肌と白い服に白い髪に対象的な赤い目はその女性を人形の様に見せた


「いい匂いね、採れたての桃みたいな柔らかい香りがする」


女性はにっこりと微笑みそう呟く


「そう……

で、貴方は誰、私になんの用?」


私の素っ気無い返しを聞いても女性はにっこりと微笑んでいた


「私カルラって言うの気軽にちゃん付けで呼んでいいわよ」


カルラは立ち上がり白のスカートをつまみ上げてお辞儀をした


「で要件だけど、おめでとうアレクシスちゃん貴方に宴への招待が来たわ」


「それはおめでたいこと

で、それは何処の誰が企画した宴なわけ?」


「そうね言うなれば"神"かしら」


「は?神?バカバカしい

話はもう終わりよ」


もとより話を受ける気は無かった

ましてや神が主催者なんて馬鹿げている


私は立ち上がり店の出口に向かう


「もう少し話を聞いてくれてもいいんじゃないかしら?ダリアちゃん」


それを聞いて私は思わず振り返った


カルラは先程と同じように微笑んでいたが

私は少しその目に恐怖を覚えた


「なんで貴方が私の名前を知ってんのよ」


王族にとっての下の名は家族のみにしか知ることが許されないもの

それに家族との会話でも使う事のない名を

何でこいつは知ってる


「言ったでしょ神だって」


つまりは自分が神だと言いたいのか


「ええそうよ」


「貴方今……私の思考を読んだ?」


私は驚きの表情を隠すことが出来なかった

その力は余りにも人智を超えていたから


そしてカルラは私の反応を見て一層嬉しそうな顔をした


「御名答、詳しくは表面上だけだけどね」


神は言い過ぎだとしてもその力には神に近しいものがある


私はまた元の席に着いた


「やっと話を聞いてくれる気に……

ちょっと待って」


すると彼女は鼻から大きく空気を吸って

うっとりとした表情になった


「懐かしい……いい匂いがするわ」


それと同時に店の扉が破壊され


「カルラァァッ!」


私にとっても懐かしい


声が聞こえた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る