作戦


沖老優子は俺のクラスメイトだ。可憐で綺麗な彼女は人から一目置かれていた。何故なら彼女は俗に言うお嬢様だったからだ。沖老は毎日のように車で通学していた。立派なリムジン、お抱えの運転手。誰もが彼女に憧れていた。そして妬んでもいた。

沖老優子は嫌な奴だった。親の肩書を前にありとあらゆるわがままをクラスメイトにしてきていた。だからそんな彼女がヘイトを沢山買ってしまうのも仕方のない事だった。

 

そんなある日の事だった。

たまたま俺はそんな沖老と一緒のクラスの係になった。内容なんてただの雑用だけど、それでも俺はその日から沖老と会話をする機会が増えたように感じた。 放課後、ホッチキスでプリントをまとめたり、先生に頼まれた資料を取ってきたりなど、俺は沖老と一緒に他愛のない会話をしながらやっていた。そして少しわかった事があった。沖老がわがままなのは両親があまり家にいない為、誰かに甘えたかっただけなのだと。例えそれがクラスの皆から嫌われるいき過ぎた行為であるとわかっていても、誰かに甘えたくて止める事が出来なかった。

彼女が幼少期一度も甘えた事が出来づ、ずっと気を張っていたのだと言うのだ。だから彼女は遂に高校で限界が来てしまったらしい。ただそれだけの話だった。親父と友達同様に接していた俺とは大違いだった。

次第に俺は沖老についてもっと知る事になった。ある時は彼女の親のビジネスの話、ある時は執事の話、ある時はコイツが意外と心配性な事などなど。俺と沖老はそれからクラスメイトから友人へと昇格した。

 

ある日の事だった。相変わらず沖老はでかいリムジンで登校して来た時の事だ。彼女は青さめた表情で教室に入った。周りの人たちは皆彼女に何があったか聞くが彼女はどうしても答えなかった。だから俺は放課後の帰り道に話を聞こうかと提案した。妙案だと思ったのだか沖老は難しい顔をしながら断った。原因は迎えの車が来るからだと言う。そのかわり彼女は僕に小さな声でこう言った。

『明日の朝、七時半ぴったりに●●公園に来て。』

と。俺は驚いた。今までわがままや冗談などはしていた彼女だが、お願いをされたのは初めてだった。しかし彼女の提案は俺に取って嬉しい事でもあった。


次の日、俺は沖老の言われた通りにした。まだあまり日が上っていない明朝、沖老はいつものリムジンで登場した。沖老はお抱えの運転手らしき人に何かをい言い、車の扉を開けて俺の前へ歩いて来た。そんな沖老はとても焦っていたように見えた。俺はそんな彼女に何かあったのかと聞く。すると彼女は小声で俺にこう言った。

 

 

 『助けて…運転しているあの人、知らない人なの…』

 

 

沖老は俺に抱きつく。そして彼女は、車からは彼女の表情が見えない所で涙をこぼした。

 『昨日からいつもと違う運転手がいて、おかしいなと思って調べたらアイツはパパの事を憎んでいる小業社の奴だとわかったの。』

 沖老は手を振るわせた。

 『でも、こんな事、屋敷の人に言ったら危険が及ぶし、第一パパとママに迷惑をかけてしまうわ。どうしようどうしようどうしようどうしよう。』

 コイツは本当に心配性だ。両親に相談すれば一発で解決出来る事を…。真っ先にこんなクラスメイトに言うのだから。だが俺はコイツがこんなの事するのを既に想定していた。彼女の性格から考えて絶対に俺に、相談すると。

 普通なら勇敢に沖老を助けるだろう。警察に連絡やら何やらして。だが俺はそんな事できなかった。

 怖い?死にたくない?お生憎様そんな理由ではなかったね。俺は運転手の方に顔を向ける。嗚呼見知った顔だ。そこにいたのは俺の親父だった。

 



 作戦は成功した。

 





 プルルルルルルル

 もしもし、沖老さんのお宅ですか。俺です。誰かわからない?じゃあ〇〇社の息子とでも言えばわかりますか?そうです、お宅が先月潰した会社の息子です。優子さんは今、俺達と一緒にいます。取引しましょう。

 



 言ってる意味わかりますよね?

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