短編集

森泉るんご

僕の父

『息子よ 今日もまた新しい肉を取ってきたぞ』

父が満面の笑みで黒い袋を掲げながら帰ってきた

『今日はなんと犬だ』

黒い袋を開けると、そこには頭から大量に血が出ている生臭い犬の死体があった

『今日はこれでステーキでも作ってくれ』

父は袋を僕に託すなり風呂場に向かい体を洗い始めた

僕は、いつもより増した異臭で吐き気が止まらず、それでも父の願いを聞き入れようと

袋から犬の死体を取り出して調理をし始めた


『いい息子を持ったなぁ』

父がビールを飲みながら僕の肩を軽く叩いた

『次は何の肉を狩るかな』

肉にかぶりつきながらまたすぐに次の肉のことを考える

僕は父が大好きだ

父の役に立つために調理師になってなんでも捌けるようになった

でももう限界だ

『父さん』

『どうした』

僕は微笑みながら

『こんなお肉はどうかな』


と言ってマンションの窓から飛び降りた…

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