親しき者へ
まきや
第1話
うちの中には、彼がいる。
真っ黒な毛の一匹の野良猫。いつの間にかベランダで見かけるようになり、気づいたら部屋に入り込んでいた。
住んでいる部屋が賃貸の、しかも一階だから、外から来るものは
なんて考えていると、近くにいた猫が私の顔を見て、とがめるようにニャアと鳴いた。
わかった……認める、黒ニャンコ。いかにも「うちに勝手に居座っている」的な体裁で、説明をしてしまった。自分のプライドの為に嘘をついてしまった。
本当は私が彼のことを招き入れた。
元カレに浮気され、同居先から逃げるように今の部屋に引っ越した。それから毎日、朝から晩まで孤独で寂しい時間をひたすら過ごした。
ある晴れた日の朝だった。ただぼおっと、外を見ていた。そうしたら、物干しの手すりの
私は思わず立ち上がった。キッチンに走ってツナ缶を開け、窓の隙間からベランダに手を伸ばし、餌の皿をそっと置いてみた。
たとえ動物相手でも、他人の為に食事を用意することが無性に嬉しかったのを、今でも覚えている。お昼頃に窓を開けたら、お皿はすっかりキレイになっていた。
この出来事がきっかけで、黒猫はわが
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます